再生可能エネルギーに特例制度、発電量の過不足は事業者の負担を軽く動き出す電力システム改革(24)

電力小売の全面自由化に合わせて、発電事業者や小売事業者に課せられる「同時同量制度」が緩和される。太陽光や風力などの再生可能エネルギーを供給する場合には、電力の過不足が生じる可能性があるため、発電事業者が責任を負わなくて済む「特例制度」を設ける予定だ。

» 2014年12月05日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第23回:「送配電事業者に厳しい規制を、人事もグループ会社と中立に」

 電力市場の大原則として、需要と供給を常に一致させる「同時同量制度」がある。たとえ一時的にでも需要と供給のバランスが崩れると、送配電ネットワークを流れる電力が不安定になり、最悪の場合には停電を引き起こす危険性があるからだ。

 この問題を回避するために、電力会社は需要と供給を調整しながら常に同時同量を図る一方、発電事業者や小売事業者には30分単位の同時同量が義務づけられている。現在は需要と供給の実績値を30分単位で合わせる「実量同時同量」を果たす必要があるが、2016年4月の小売全面自由化以降は事前の「計画値同時同量」でも容認する。

 計画値同時同量に変わると、発電事業者や小売事業者は当日の1時間前に確定する計画値で需要と供給を合わせればよい。実際の需給バランスは送配電事業者(電力会社の送配電部門)の責任で調整する。これに伴って発電・小売事業者は計画値と実績の差に対する電気料金(インバランス料金)を送配電事業者に支払う必要がなくなる。

 さらに発電量の予測が難しい再生可能エネルギーに対しては、2種類の「特例制度」を設ける方向で検討が進んでいる。その1つ目は発電事業者が計画値を決めにくい太陽光と風力を対象にした特例制度である(図1)。

図1 再生可能エネルギーの種別による発電量の特性。出典:資源エネルギー庁

 太陽光と風力は同じ地域内でも天候の差によって発電量にばらつきが生じる。そこで地域の電力をとりまとめる送配電事業者が計画値を設定する方法に変更する。この方法をとることによって発電設備ごとの誤差を平準化して、より精度の高い計画値を設定できるようになる(図2)。実際の発電量が計画値からずれた場合でも、送配電事業者の責任で電力を調達して調整する。

図2 送配電事業者による計画発電量の設定イメージ(太陽光の場合)。出典:資源エネルギー庁

 ただし再生可能エネルギーの中でも天候の影響を受けにくい地熱・水力・バイオマスは発電事業者が計画値を決めやすいため、特例制度の対象にはならない。計画値同時同量の責任は発電事業者が負うことになるが、2つ目の特例制度によって小売事業者が責任を負うこともできる(図3)。この場合は再生可能エネルギーの種類を問わない。

図3 再生可能エネルギーに対する計画値同時同量の特例制度。出典:資源エネルギー庁

 2つ目の特例制度を適用すると、発電事業者は計画値に関係なく実際に発電した全量を小売事業者に買い取ってもらえる。一方で小売事業者は複数の発電事業者と契約してリスクを最小限に抑える必要がある。発電事業者は売電収入を増やすことができ、小売事業者は発電事業者を集めやすくなる。2つの特例制度を通じて発電・小売事業者ともに積極的な事業展開を図ることが期待できる。

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