独仏協力で世界記録、効率46%の太陽電池蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年12月03日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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どのような太陽電池を開発したのか

 46.0%という記録を達成した太陽電池セルには構造上の特徴がある。異なる化合物半導体を上下方向に4層重ね合わせた4接合太陽電池セルと呼ばれる構造だ*1)

 4層を重ね合わせた理由は、1層、つまり単一の材料を用いた太陽電池では、理論上、約30%以上の変換効率を実現することはできないからだ*2)

 実際、研究開発が進む太陽電池セル技術のうち、30%以上の変換効率を記録しているのは、2接合以上のものに限られる。米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が公開している技術別の変換効率の記録からも、このような事実を読み取ることができる。

 なぜ単一の材料では約30%以上を実現できないのか。その理由はこうだ。ある半導体材料を選ぶと、「Xnm(ナノメートル)」よりも長い波長の光を吸収できなくなる。さらに、Xよりも短い波長の光を吸収できるものの、その光のエネルギーの一部しか利用できない(関連記事)。

 例えば、Xを赤外線(長波長)に近くなるように設定すると、吸収可能な光の波長の範囲は広くなる。しかし、吸収した光のエネルギーの多くが無駄になる。Xを紫外線(短波長)の方に近づけると、吸収した光のエネルギーは無駄になりにくい。しかし、今度は吸収できる光の波長の範囲が狭くなる。Xを最適値にしたときに変換効率が約30%となる。

 この限界を突破する手法が多接合だ。今回は4つの層がそれぞれ異なる波長の光をほぼ均等に吸収するように設計した。このため、太陽光のうち、300nm(近紫外線)〜1750nm(近赤外線)の範囲の光を効率よく吸収し、発電できる。

 4接合セルの開発に当たっては4層が生み出す電流を正確にそろえるため、化合物と層の厚みを調整する点に技術的なチャレンジがあったという。

 図3は、産業技術総合研究所(AIST)が測定した今回の太陽電池セルのI-Vカーブ(電流-電圧曲線)。短絡電流(ISC)が337.9mA、開放電圧(VOC)が4.227Vであり、曲線因子(FF)が85.1%と高い値であることが分かる。

 508倍に集光しているため、測定時の入射光の強度は50.8W/cm2と高い(太陽光の強度は1kW/m2)。

*1) それぞれの層はIII族の元素とV族の元素の化合物からなる。具体的な化合物の名称は公開されていない。なお、2013年9月に発表した変換効率44.7%の太陽電池セルも4接合である。同セルではガリウムインジウムリン(GaInP)とガリウムヒ素(GaAs)、ガリウムインジウムヒ素(GaInAs)、インジウムリン(InP)を各層に用いていた。
*2) これをショックレー・クワイサー(Shockley-Queisser)限界と呼ぶ。32.7%が限界値である。この限界値は太陽光に含まれる波長ごとの強度(太陽スペクトル)から求まる。

図3 産業技術総合研究所(AIST)の測定結果 出典:Fraunhofer ISE
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