海外で作った「水素」が海を越えて日本へ、6年400億円のプロジェクト始動自然エネルギー(1/4 ページ)

NEDOは、海外の未利用エネルギーから水素を製造・貯蔵・輸送し、日本国内で利用する大規模な水素エネルギー利用システムの技術開発プロジェクトを開始する。水素を製造し海を越えて運搬する実証実験は「世界に先駆けたもの」(NEDO)だという。

» 2015年06月10日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 化石燃料を利用したエネルギーが大気汚染や地球温暖化を招くため、これらの原因物質を発生しない新たなエネルギー源として注目を集めているのが「水素」だ。水素は、使用時の温室効果ガスの排出がゼロである他、電力を変換し、ためやすく運びやすいという特性から未利用エネルギーの活用にも貢献する。さらに水素エネルギーの研究開発は日本が30年以上にわたって世界をリードしており、日本の強みが発揮できる領域であるという点もポイントとなる。

2030年に水素社会を実現へ

 これらの背景から、経済産業省では2014年4月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表(関連記事)。水素社会の実現に向けて、燃料電池の社会への本格実装を目指す「フェーズ1」、水素発電の本格導入と大規模な水素供給システムの確立を目指す「フェーズ2」、総合的なCO2フリー水素供給システムの確立を目指す「フェーズ3」の3つのフェーズに沿った普及戦略を推進している。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)でも、このロードマップに合わせた研究開発を推進。今回発表したプロジェクトは、このロードマップにおけるフェーズ2に当たるものとなる(図1)。

photo 図1:「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の全体計画(クリックで拡大)※出典:NEDO

 フェーズ2は、水素発電および水素サプライチェーンの実現を目指したもので、現在の化石燃料の利用サイクルを水素を中心に置き換えることを目指す。具体的には、2020年代半ばに海外からの水素価格を1Nm3(ノルマルリューベ)当たり30円程度(プラント引き渡し価格)まで引き下げる他、効率的な国内流通網整備を進め、商業ベースでこれらの取引が実現する仕組みを作る。さらに2030年頃には、海外での未利用エネルギー由来の水素の製造、輸送、貯蔵、を商業ベースで実現可能とし、水素発電の本格導入を目指すという。

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