東北大学「東北発 素材技術先導プロジェクト」で開発された「NANOMET」は、従来の高透磁率材料並みの低鉄損を持ちながら、ケイ素鋼並みの高い飽和磁束密度を持つことが特徴だ(図2)。新材料は、鉄を質量比で93〜94%含む高鉄濃度の材料で、構造は10ナノメートル程度のα鉄の粒の周囲にアモルファス磁性層を持つ高鉄濃度型の超低損失ナノ結晶軟磁性材料である。アモルファス磁性層の組成は「ケイ素(Si)やホウ素(B)、リン(P)、銅(Cu)など一般的な元素で構成され、レアメタルを含まないため、材料の高騰によるリスクが小さい理想的な材料である」と同プロジェクトの代表研究者である東北大学 金属材料研究所 リサーチプロフェッサーの牧野彰宏氏は述べている。
同材料は、強磁場を必要とする用途での活躍が期待され、特に、送電網に用いる大電流トランスや、モーターでの利用が期待されるという。トランスやモータに今回のナノ結晶材料を適用すれば、鉄損を減らすことによる省エネ化が可能であるためだという。従来トランスやモーターの鉄芯部分などの材料については電磁鋼板が使われる場合が多かったが「既に電磁鋼板は100年使われており、この間抜本的な進化はなかった。これを置き換えることで、新たな進化をもたらしたい」と牧野氏は述べている。
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