バイオマス発電が「モリノミクス」を加速、港の洋上風力と波力にも期待エネルギー列島2016年版(6)山形(3/3 ページ)

» 2016年05月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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日本初の洋上風力発電所が運転中

 地域の特性を生かしたバイオマス発電が活発になり、固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で第9位に入るまでに拡大した(図9)。内陸部では中小水力発電の導入量が着実に増える一方、沿岸部では洋上を含めて風力発電が広がりを見せている。

図9 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 まもなくバイオマス発電所の建設が始まる酒田港では、洋上風力と波力発電のプロジェクトもある。酒田港は年間を通じて日本海から強い風が吹くため風力発電に適している。県内で最大の「酒田風力発電所」は2004年に日本初の洋上風力発電所として運転を開始した。港の北側に8基の大型風車を設置して、そのうち5基が防波堤の内側にある水路部分の洋上に建っている(図10)。発電能力は8基を合わせて16MWある。

図10 「酒田風力発電所」の全景。出典:ジャパン・リニューアブル・エナジー

 このほかに酒田港の周辺には7基の大型風車が運転中で、新しい風力発電所の建設計画も始まった。コスモ石油グループが港の北側と南側に3基の大型風車を設置して、2017年10月に運転を開始する予定だ。1基あたりの発電能力は3MWと大きくて全体では9MWになる。

 将来に向けて酒田港の沖合に洋上風力発電所を展開する構想もある。山形県が2014年に協議会を設立して、風車の設置に適した場所の選定などを進めている。ただし船舶の航行や漁業に与える影響があり、関係者間で調整を続けている段階だ。

 酒田港では2015年1月から9カ月間にわたって波力発電の実証試験を実施している(図11)。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が中心になって推進する海洋エネルギーの研究開発プロジェクトである。

図11 酒田港に設置した波力発電システム。出典:NEDO

 実証試験に使った波力発電システムは「振動水中型空気タービン方式」と呼ぶユニークな方法を採用した。港の護岸から水中まで「空気室」を設置して、波の振動で空気室の中の水面が上下するエネルギーを利用する(図12)。空気が振動する力でタービンを回転させて発電する仕組みだ。最大で15kW程度の電力を作ることができる。

図12 波力発電システムの構造。出典:NEDO

 この波力発電システムは装置の構造が単純なうえに、防波堤など既存の構造物を利用できるため、建設費や保守費を低減できるメリットがある。当面の課題は電力1kWhあたりの発電コストを国の海洋エネルギーの開発目標である40円以下に抑えることだ。

 実証試験では空気室の周囲に間仕切り壁(プロジェクティングウォール)を設置して発電効率の向上にも取り組んだ。試験の結果を検証したうえで今後の事業展開を検討することになっている。洋上風力と波力発電が酒田港を起点に山形県から全国各地へ広がっていく期待は大きい。

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2015年版(6)山形:「雪国に広がる小水力発電のパワー、農業用水路や水道設備を生かす」

2014年版(6)山形:「豪雪地帯で増えるメガソーラー、太陽電池の種類と角度がカギに」

2013年版(6)山形:「2030年に大型風力発電を230基、日本海沿岸から内陸の高原まで」

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