リチウムイオンが躍進、電力貯蔵向け蓄電池市場は2025年に5.7倍へ蓄電・発電機器(1/3 ページ)

再生可能エネルギーの普及やそれに伴う系統安定化、エネルギーのさらなる効率活用ニーズなどの高まりを背景に需要が増大している蓄電池。富士経済が発表した電力貯蔵システム向け二次電池市場の調査結果によると、2025年には2015年比で約5.7倍の7423億円にまで拡大する見込みだ。

» 2016年05月27日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 調査会社の富士経済は2016年5月23日、電力貯蔵システムに採用される二次電池(蓄電池)の世界市場の調査結果をまとめた。調査対象とした蓄電池は、リチウムイオン電池(LiB)、鉛電池(Pb)、NAS電池、レドックスフロー電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタだ。

 こうした蓄電池の世界市場は、再生可能エネルギーの導入拡大とそれに伴う系統安定化需要、電力システム改革の進展に伴う新たなエネルギー関連サービスの活性化などの影響により、世界的に今後も大きく成長すると予想。2015年の世界市場規模は1313億円だが、10年後の2025年には約5.7倍の7423億円にまで拡大すると予測している(図1)。

図1 電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場の予測 出典:富士経済

系統用市場は3174億円規模に拡大

 調査では系統用電力貯蔵システム向け、住宅用、非住宅用の3つの分野で用途別の市場規模予測も公表した。このうち、2025年において規模が最も大きいのが系統電力貯蔵システム向けの蓄電池市場である。変電所や従来型発電所などの系統設備、発電事業用太陽光発電システムや風力発電システムに併設される蓄電池が対象だ。市場規模は2015年の652億円から、2025年には約4.9倍の3174億円に拡大すると予測している。

 系統設備に併設する電力貯蔵システムは、現状では米国におけるアンシラリー(周波数安定化)サービス用途や、離島におけるマイクログリッドなどの系統安定化を目的とした実証試験での導入が中心である。当面はこうした用途が市場拡大をけん引していくが、今後は欧州におけるアンシラリーサービス市場の整備・拡大も寄与していく見通しだ。

 日本の場合、現在は実証試験による導入が大部分を占める。北海道、九州、沖縄、その他の島嶼(しょ)部における、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統安定化用途や、離島におけるマイクログリッド向けでの利用が多い。しかし2016年以降は電力システム改革の進展に伴い、アンシラリーサービスの普及する環境が整備されていくと見込まれるため、さらなる需要拡大が期待できるとしている。

 さらに2018年以降、世界の多くの地域で再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力コストと同等か安価になる「グリッドパリティ」を迎えれば、太陽光・風力発電システムの普及が加速し、それに伴い併設する電力貯蔵システムの需要の拡大が見込めるとした。

今後もリチウムイオン電池が躍進

 系統用電力貯蔵システムではLiBの採用が多い。系統安定化などの用途はでPbやNAS電池の導入が先行していたが、現在はLiBが主流となっている。調査では今後LiBの低価格化が一層進むことで、アンシラリーサービス用途を中心にさらに導入が拡大していくと予測する。NAS電池、レドックスフロー電池は4時間超の出力時間が求められる用途で導入が進むとした。Pbは安全性やコスト重視の案件で、特に風力発電システムの出力安定化用途を中心とした導入が予想されるとしている。

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