元高校教師がいかにしてネットサービスを開発したか――「割り勘電卓」増永さんひとりで作るネットサービス(2/2 ページ)

» 2009年05月12日 12時00分 公開
[田口元,Business Media 誠]
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ブログのパーマリンクに感動、広島密着サービスも

 「わしペー」は教師をやりながらも更新を続けていた。ネタの投稿も1000を超えた。また、なんとなく個人ブログも始めてみた。最初はブログを馬鹿にしていたという増永さん。「ブログなんてWebページを作れない人向けのシステムでしょ? という理解だったのです。でも、使ってみてそのすごさに気づきました」

 更新の手軽さに加え、「これはすごい」と思ったのは「1記事につき1URL」というパーマリンクの考え方だった。「当時わしペーのネタは最初はトップページにあって、トップページがいっぱいになると過去記事のページに移していたのです。でもこれだと前にみたネタを探すときに分からなくなりますよね」。そのURLをみればいつでもそのネタを見つけることができる、という考え方は増永さんにとって画期的だった。最初は「飽きたらやめる」と思ってはじめた個人ブログ「頭ん中」であったが、「面白くてやめられなくなった」ので現在も精力的に更新を続けている。

 ブログに感銘を受けた増永さんは、広島のブログを集めればなにかが起こるのではないか、と思い立ち、ネットで知り合ったエンジニアの友達と一緒に「広島ブログ」なるサービスを作ることにした。Webのプログラミングは初めてだったが、本を買ってきたり、友人の助けを借りて、なんとか思っていたようなサービスを立ち上げることができた。

 「一言でいうとブログランキングのような仕組みなのですが、裏側で『あしあと帳』のような機能があったのです。それでお互いのブログを訪問しあって相互にアクセスを伸ばせるような仕組みになっていました」。この広島ブログ、地元密着型のサービスだったので、その後参加ブロガー同士でオフ会が開かれたり、そこから新しいビジネスが立ち上がったこともあったという。

社労道、割り勘電卓、王様の耳はXXの耳、そして……

 こうした活動をしていたこともあり、2006年、増永さんは教師を辞めて独立することを決意する。「最初から何かをしたい、という明確な目標があったわけではありませんが……」。それでもとりあえず会社を作らねば、と株式会社を設立することにした。その過程で広島ブログにも参加している社会保険労務士(社労士)の人と意気投合して次のサービスを立ち上げることになる。

 増永さんが次に立ち上げたのは「社労道」。社労士の試験を受けたい人のための学習サイトである。友人にも手伝ってもらいつつ、手探りで作り始めたサービスだったが、無料コンテンツに加え、社労士に直接質問できる有料プランも作ることにした。集客は社労士の方が受験生向けのメルマガを持っているため、思ったよりもうまくいっているという。

 サービス開発の勘所が分かってきた増永さんはそれ以降も次々にサービスを立ち上げる。「割り勘電卓」はケータイで飲み会の「割り勘」を簡単に計算してくれるサービスだ。多めに払う人、少なめに払う人、総額などを入力するとささっと何通りかの支払いパターンを計算してくれる。「前のケータイにこうしたソフトが付いていたのですが、新しいケータイになくて……。しようがないから自分で作りました」。最初は自分だけで使っていたが、せっかくなので、と公開したら思ったより多くの人に使われているという。

 また「王様の耳はXXの耳」というサービスも立ち上げた。これは友人が「仕事上問題があるから言えないことだけど、どうしても言いたいことがある。この気持ちをどうしたらいいだろう」と日記に書いていたことから思いついた。そういえばみんなそういうストレスを抱えているはず、ということで作ったサービスだ。このサイトではどうしても言いたいことをまず入力し、大事な部分を伏字にして公開することができる。「データはこちらでも一切保存していないので安心してご利用ください」と増永さんは語る。

 そして最近立ち上げたのが「名前をつけてやる」というサービスだ。これは増永さんのブログ仲間が、音楽アルバムのジャケットに「勝手に一言」をつけて遊んでいるのをみてひらめいたものだ。これってサービスにしたら面白いのではないか、と思い立ち、早速本人に了承をとって開発をはじめた。途中開発が滞ったこともあったが2009年4月に公開、初日で1万PV、300を超える投稿があったという。

メールで解決しない問題も、会ったら5分で解決できる

 「新しいことを始めたくて」今は広島から大阪に移ってきた増永さん。将来的には自分で作ったもので渡りあって行きたいと考えている。今はさまざまなアイデアを温めている最中だが、心がけているのは「人に会う努力を惜しまない」ことだという。

 「ネットのコミュニケーションツールが充実してきたので人と会わなくても良くなると言われていますが、そうは思いません。逆にネットをやればやるほど、人と会うことの大事さを痛感しています。例えば、メールやSkypeで全然解決しなかった問題でも、会ったら5分で解決することもありますよね」。増永さんがこれから誰と会い、何を作り出していくのか。彼の次回作に期待したい。

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