被写体は逃げないし、デジカメなら何枚でも撮れるし――と、アマチュア写真家でも良い写真が撮りやすいブツ撮り。今回は、ブツ撮りのクオリティをさらに高めるお気に入り文具を紹介しよう。
私はブログなどに文具など小さいものの写真を掲載することが多い。今回はそんな撮影のお話だ。
カメラに関しては全くの独学でハッキリ言ってアマチュアの私だが、最近は仕事でもプライベートでも、ほとんど毎日のように何かしら写真撮影している。仕事なら製品についての指示や、図版作成、プレゼン資料作りなど。プライベートではブログに掲載する写真や、もちろんこのコラムに掲載している写真もそうだ。
写真を撮る度いつも思うが、写真は本当に奥が深い。私みたいなシロウトが片手間に極められるものではないのは分かっている。しかしそれでも、少しだけ救われている部分がある。私が撮影するモノの大半がブツ撮り。それも比較的小さいものだ。
ブツ撮りはいい。相手が逃げないからシャッターチャンスを逃がすことがない。幸いデジタルカメラは何枚撮ってもタダ。しかもすぐに結果を見られるから、失敗してもちょっとずつ条件を変えて何度でも試してみることができる。
しかも私の場合、取るべきポイントがすごくハッキリしている。言ってみれば図面やテクニカルイラストを描くようなものだ。これなら練習と段取りである程度はなんとかなる。
ということで、わりと普通の私がいつも文房具などをどうやって撮影しているか、という話である。このコラムの写真も、すべて自分で撮影しているので、その程度の写真(笑)はすぐに撮れるようになるのだ。
撮影するカメラは、もちろんすべてデジタル。コンパクトタイプ、一眼レフ、どちらも使うけど、どっちもそれほどすごい高級品ではない。ポイントはマクロ撮影機能。デジカメ購入の時には、家電量販店に何度も足を運び、自分のSDカードを挿して試し撮り。試すのは自分のポケットに入っている筆記具や時計など。そういうのをギリギリまで寄って撮る。単に最短撮影距離の数値だけでなく、そのときにどんな写真が撮れるのかも見て比べる。
コンパクトは、キヤノンの「IXY DIGITAL 830 IS」。なんにも考えずにマクロモードにするだけでそこそこキッチリした画が撮れる。マクロモードで動画も撮れる便利モノ。いつもカバンに入っているのはこっち。一眼の方は、オリンパス「E-520」(ホントは「E-620」が欲しい)に、わりと万能の35ミリ単焦点のマクロレンズ。ブツ撮りのほとんどはこれ1本で充分。
撮影といっても、たいていはそれほどしっかり準備をしてるひまもないので、適当にそのへんのテーブルとかで撮影している。
ここで、私の超お気に入り文具を2つご紹介。1つはノート。私のお気に入りノートである「ニーモシネ」は、もちろん、ノートとしても非常に便利なのだが、撮影するときの簡易バックとしても超便利だ。周囲の雰囲気を見せたい場合は別として、製品のカタチを見せたいときは、バックに余計なモノは写り込まないほうがいい。私の場合は、カバンの中にいつもニーモシネA4が入っているので、デスクでも出先でも、まずニーモシネを広げてその上に製品を載っけて撮る。
ニーモシネの表紙は黒のPP(ポリプロピレン)製。表にはロゴが印刷されているが、表紙をくるりと返せば、光沢を抑えた梨地の黒。写り込みを気にせず撮れる。しかも表紙の裏は通常内側だから、傷が付きにくい。裏表紙はクラフト(茶)のボード。こちらも内側を返せば、バックに使える。
私の使っているニーモシネの中紙は5ミリ方眼だが、白いバックとして使えるし、撮影するブツのサイズも分かりやすい。表紙の硬いリングノートなので、どこで開いても平らな撮影台が用意できるというのはうれしい。私のブログなどの写真で、バックが黒や茶のものは、まずこれで撮影したものと思っていただいて間違いない。ついでに、白バックのほとんどは、IKEAの机の上にただ置いただけ。
もう1つは、プリットの「ひっつき虫」。これは、壁面にポスターを貼ったり、滑り止めとして何かを固定したりするときに使う、ねりけしみたいなものだが、これが超便利だ。例えば筆記具などを撮影するとき、円筒状の筆記具は、机に置くと、たいていクリップを横に向けて寝てしまう。こんな時に、ひっつき虫をゴマ粒ほど(ホントに少量でいい)取って台に乗せ、その上に筆記具をぐにゅと載せると、あらふしぎ。転がらないから撮りやすい。
応用範囲はものすごく広くて、何かを斜めに立てたいときなど、後ろに支えになるモノを置いても、それだけでは滑って倒れてしまうような場合でも、ひっつき虫でぐにゅペタっとくっつけると、いとも簡単に固定できる。名前の通り、ねりけしなどよりもずっとよくひっついて頑張るので、例えばこんなクリップ(右の画像)でも、この少量で立たせることが可能!
ひっつき虫は、表面が平滑なものならきれいにはがすことが可能なので、セロハンテープなどで固定するよりずっと安心だし、また、小さな部品などの埃やゴミをそうじしたいときにも役立つスグレモノだ。粘土状なので、持ち運ぶときには、私は無印良品のプラケースに少量だけ台紙ごと切り取って入れてある。たったこれだけのものをもっているだけで、「その場」撮影はぐっと楽になる。
あとはマクロモードで撮るだけ。基本、フラッシュはオフ。自宅などで三脚があるなら固定してセルフタイマーでシャッターを切ればバッチリだが、出かけた先でそんなひまはない。ブレるようなら、カメラの下に本でもペットボトルでもなんでもいいから台になるモノを置いて手を固定する(机にひじをつくだけでも手ブレはかなり防げる)。
もしカバンにもう1つ入れておくなら、マンフロットのカメラスタビライザーがオススメ。カメラに付けたまま折りたためる構造で、広げると前後に傾斜を着けることもできるので、これまたテキトー派には超オススメ(一眼で撮る場合、もし外付けのストロボを持っているなら、ストロボを後ろや上に向けて部屋の壁面に反射させて間接照明する「バウンス」という方法を使う)。
写真のデキはカメラの画素数では決まらない。私を含むほとんどのシロウト写真家の場合、問題のほとんどはカメラの性能以前だ。背景を片づけて、撮りたいモノとカメラをしっかり固定する。これさえできれば、後はカメラのマクロモード(フラッシュだけはオフ)におまかせで撮っちゃえばいい。ちゃんと撮れたかどうかはすぐに確認できるんだから、蛍光灯とかが映り込んでたら、場所を変えてみるとか、そういう工夫を少しずつすればいいのだ。
1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。
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