やることなすことうまくいかない……そんなときに人は「思考のデフレスパイラル」に陥ります。商品が悪い、地域が悪い、自分が悪い、とあちらこちらの「悪いこと」が目について仕方なくなるのです。1人でここから抜け出すのはまず不可能。では、どうすれば……?
ほとんどの会社で「営業」は単独行動が基本になっています。しかし著者はあるとき、2人で営業に行くほうが、はるかに契約を取りやすいことに気がつきました。それは決して偶然ではなく、現代の「営業」現場の持つ本質的な理由がそこにはあったのです。
明けましておめでとうございます。せめて移動中くらいPCから開放されたいのに「メールが使えないと困る。今年も日本中を移動するつもりならNetbookを買え!」と、正月早々、回りから一斉に催促されている吉見範一です。
前回の記事からとっても間が空いてしまいましてすいません。実はその間わたしもいろいろと思うところがありまして、比叡山にこもって秘密の特訓をしていたんです。はい、もちろん大ボラですが……(笑)。
でもあれですよ、特訓!! とか、修行!! という響きはいいですよね。3カ月の荒行を終えて山から降りてきた修験者なら、なにかこうワクワクドキドキな必殺技を繰り出してくれそうな気がしませんか! なーんて、いい年してアホな話を振りまくのもこのぐらいにしておきますが。
まあ、修験者の荒行なら3カ月じゃあんまりたいしたことなさそうですけど、これが営業だったらどうでしょう? 営業成績をドーンと上げるための手を打つとしたら、翌日からとは言わないにしてもせめて3カ月以内にはその成果が目に見えるようであってほしい、と思いませんか? 手を打っても打っても一向に上向かない、成果がでない、という状態で3カ月以上モチベーションを持続させるのは正直しんどい話です。
実は、「とっても間が空いてしまった」間にやっていたことはこれなんです。
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わたし、吉見範一はいくつもの営業品目で新規開拓を成功させてきましたが、新しい営業所に入ってすぐにダントツの成績を上げる、というタイプのカリスマ的営業ではありませんでした。マーケットを調べ、商品を知り、開拓方法を考えてツールを用意してといった手間ひまをかけていました。そのために2カ月ぐらい時間がかかるので、その間は大して売れません。しかしその仕込みが3カ月目から生きてきて、以後は怒涛(どとう)のごとく売りまくる、というパターンが多かったんですね。
その2カ月間にわたしが何に目をつけてどう考えるのか? その「新規開拓を成功させてきた営業マンの思考フレームワーク」を形にしたのが333営業塾です。比叡山ならぬ、横浜と千葉のコラボレーションで生まれた333営業塾。まずは無料の連続メール講座全12回でその全容を知ってください!
それにしても、「いくら手を打っても成果がでない状態で3カ月以上モチベーションを持続させるのは難しい」と先ほど書きましたが、この話になると思い出す、ある1人のステキな女性がいます。
まーたこのオジサンなにを言い出すんだと思われそうですが、真面目に今からとってもイイ話をするのでここで読むのやめないでくださいね。
わたしが通信回線の営業をしていたときの同僚に、Tさんという人がいました。前職はスポーツクラブの受付業務だったそうで、毎日大勢の会員さんや新規の見学者に接しては、いろいろな説明をし、要望を聞いては処理し、という経験をしていただけあってとても気のきく女性でした。しかも笑顔がキュートで優しい性格、そして女性らしい身奇麗さとこまやかな心遣い、ほんとうに誰でもフッと好意を持ってしまいそうな、おっとっと、営業所内でも好感度ナンバーワンだったと思います。
でも、売れない。
大半の企業で採用されている個人別の営業組織でよくあるように、担当地域を与えられて営業をしていたのですが、売れなかったんです。必死の思いでテレアポをし、やっととれたアポ先に出かけて商談をしてみても、あえなく玉砕する毎日。これでは、いくらポジティブシンキングしようと思ってもそうそうできるものじゃありません。
ほどなく、Tさんの気持ちが沈んでいる様子がまわりにも分かるようになってきました。そうなると人間、ある悪いパターンに陥りやすくなります。それは、
ああ、今日も売れなかった……こんなに頑張ってるのに全然成果が出ないなんて……きっと(A)だからダメなんだ!
さあ、空欄Aに入る言葉はなんでしょう? といきなり試験問題風になっちゃいましたけど、ここ、大まかに2種類あります。
どちらにしても「だからダメなんだ」マインドなので、普通はこの両方を行ったり来たりしながら、どんどん悪い方に悪い方に考えてしまいやすいんですね。思考のデフレスパイラル、と思っていただいていいでしょう。
いったんこの悪循環にはまると、次から次へと悪いことばかりが目につくようになります。
などなど、「ダメだ」という方向に意識が向いてしまうとそっちの情報ばかり気がつくようになるんですね。これを心理学では「確証バイアス」と言います。こんな思考のデフレスパイラルに陥った人に向かって、
そんなんじゃいけない、ポジティブになろうよ、前向きに!
と外から励ますのは簡単ですけど、「売れてない」という現実は10トントラックを2台連結してブレーキかけたぐらいに重いもので、ここから1人ではい上がるのは現実問題として無理なんです。
思考のデフレスパイラルからはひとりでは抜け出せない。かといって外から励ましても効果はない。ではどうしたらいいのか?
外からではなく、内から。励ますのではなく、気づかせること。これが効果的です。
例えばわたしが営業所長をしていたときによくやっていた方法で、「良かったこと発表」というものがあります。これはユニット営業を組んでいるペア同士で、お互いにパートナーの良かったことを1つ、朝礼の時に発表するものです。あいさつの声が気持ちイイとか、名刺交換が落ち着いてできているとか、そんなごくごくささいなことでもかまいません。とにかく相方のイイところを見つけてもらうわけです。
そうして、現場を知っているパートナーから具体的な指摘を受けると、外野から抽象的に励まされても上向かなかったモチベーションが、あら不思議、グーンと上がってしまうんですね。Tさんもそれで自信をとりもどしてくれた1人です。
意外によくあるのが、「本人はたいしたことと思っていないのに実はすごい」というもの。人間、自分が得意なこと、向いていることというのは簡単にできてしまうので、本人が「こんなの当たり前だろ、誰でもできることだし自分の強みじゃない」と思っているケースが案外多いのです。
他人のほうが冷静にその強みを「イイこと」として評価しますから、それを率直に指摘すると、本人があっと驚き、そして自信を持てるようになる。自罰的傾向から脱出できる。こんな場面をわたしはいくつも見てきました。
気づけなかった「イイこと」に気づける、というのはなにも自分のことだけでなく、営業相手先の会社のことについても同じです。1人が「商品が悪い! 地域が悪い!」という他罰的傾向にはまっても、もう1人が一緒に落ちずに客観的な視点を保っていれば、そこから引き戻すことができます。
ポジティブ思考というのも単なる精神論に陥りがちで困ったものですが、ネガティブ思考もやはり営業の仕事においては大敵です。ネガティブ思考スパイラルの芽は早め早めに摘んでおきましょう。
それができるのは、同じ現場を見て同じ会話を共有した者どうしであればこそです。
だから、ユニット営業なんです。2人で行く「ユニット営業」を、あなたの会社でも実践してみませんか?
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