モテる人の伝え方――「Iメッセージ」を使ってみよう研修に行ってこい!

人前で話すためのトレーニングを行うときに一番難しいのは、その発表に対してコメントすること。そんなときは、自分を主語にした「Iメッセージ」を使ってみましょう。

» 2010年02月15日 18時38分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 「よう似合うちゅうぞ(似合ってるぞ)、そのかんざし」

 このセリフは、毎週20%台の高視聴率を獲得しているNHK大河ドラマ「龍馬伝」での坂本龍馬のセリフです。

 男性と女性の役割が明確に分かれていた時代に、男性が女性に気楽に言葉をかけることはそう多くなかったでしょう。そんな時代に、龍馬のように人を見て、率直に自分の思ったことを口にされると、伝えられた方はドキっとしたでしょうね。

 今回は、ロールプレイング3分間スピーチなどを行った際に、相手が次の行動に生かせるような伝え方をするためのヒントをご紹介します。

次の行動に生かす視点

 人前で話すためのトレーニングを行うときに一番難しいのは、その発表に対してコメントすることです。自分ができているかどうかも確信が持てないことについて、相手にあれこれ言うのは気が引けますよね。

 なぜそのように感じてしまうのか? それではここで、「コメント」という言葉について確認してみましょう。

  • コメント/comment

 ある問題について、意見や、補足的な解説などを加えること。評釈。論評。

(大辞泉より引用)

 なるほど。「コメント」という言葉には、「ある問題について、意見や補足的な解説を加えるという意味があるようです。そのため、伝える側と伝えられる側の位置関係に高低が生まれ、伝える側にとっても伝えられる側にとっても、心理的な抵抗につながりやすくなるのでしょう。

 そこでわたしが今回お勧めするのは、「インプレッション」を伝えることです。

  • インプレッション/impression

1.印象,感銘、感動

2.(しばしば単数形) (……という)(漠然とした)感じ、考え、記憶、感想

 以下略

(大辞泉より引用)

 上から伝えるような「コメント」に比べ、「インプレッション」は自分自身が感じたことを素直に表現できるキーワードと言えます。

ジョハリの窓

 「ジョハリの窓」をご存知でしょうか? Wikipediaによると次のように記されています。

 1955年夏にアメリカで開催された「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」席上で、サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)とハリー・インガム(Harry Ingham)が発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」のことを後に「ジョハリの窓」と呼ぶようになった。ジョハリ(Johari)は提案した2人の名前を組み合わせたものである。(以下略)

Wikipedia-ジョハリの窓より引用

 このグラフモデルを図にすると、以下のようになります。

ジョハリの窓

 この図では、自己を次の4つの視点でとらえています。

  • 自分自身が知っている自分(Open Self)
  • 自分だけが知っている自分(Hidden Self)
  • 自分は知らず、周囲が知っている自分(Blind Self)
  • 自分も周囲も知らない自分(Unknown Self)

「伝える」目的とは?

 ジョハリの窓をもう少し細分化すると、その中には、その人の強みも弱みも入ってきます。ここで、職場内のトレーニングという場面に限って「伝える」ことの目的を考えてみましょう。ロールプレイングや3分間スピーチなどの実践者に対して、周囲が感じた印象や感想を伝えることによって、

  • 実践者に自信が増す
  • 自分が知らなかった強みに気づき、意欲が高まる
  • 自分が改善したかったことを改善するきっかけと、改善ポイントが分かる

 といった効果があります。ジョハリの窓の図に色付けしている通り、「自分が知る自分の領域を強化できる」、あるいは、「自分が知らない自分の良い点を知り、自分の領域が広がる」。これにより、「意欲が高まり、行動できるようになる」。これが伝える目的になります。

Iメッセージ

 冒頭にご紹介した龍馬のセリフの後、言葉をかけられた女性・加尾は、その後の行動が変わっています。ドラマでは恋心に発展しているのでその顛末(てんまつ)をご紹介するのは控えますが、ポイントは一緒です。

 龍馬が使ったのは、Iメッセージと言われる伝え方です。

 Iメッセージは、臨床心理学者のトーマス・ゴードン博士が親子間のコミュニケーションにおける技術として紹介したことから広く知られるようになりました。Iメッセージでは、主語を「わたしは〜」ではじめます。

 龍馬のセリフを例に挙げると、龍馬が加尾に対して言った、「よう似合うちゅうぞ、そのかんざし」はIメッセージです。現代風に言いかえると、「(わたしは)そのかんざしが、あなたに良く似合っていると思います」となります。

 職場のトレーニング場面に置き換えて考えると、「わたしは、○○さんの話を聞いて、自分もその商品が欲しくなりました」「わたしは、○○さんの話を聞いて、自分もそこに行きたくなりました」といったように伝えるのです。

 伝え手のメッセージを自分自身がどのように受けとめたか、「わたし」を主語にして、印象や感想(インプレッション)を素直に伝えればよいため、コメントにありがちな「評釈」「論評」といった堅苦しさを抜きにできますし、相手も素直に受け入れやすいというメリットもあります。主語のわたしの「I」と、印象や感想を意味するインプレッションの頭文字の「I」、その両方を意識するのがポイントです。

 さらにトレーニングという目的を踏まえ、ワンランク上の表現を目指す方は、

  • (なぜ商品が欲しくなったのか)その理由

 まで伝えてみましょう。話し手が、自分自身の強みを深く理解でき、さらなるレベルアップのための改善につながる思考や、行動の着眼点を得られるでしょう。

 一緒に働くとやる気になる、性差を越えてモテる人は、無意識にこんなメッセージを伝えているのかもしれません。メッセージを伝えられた側が自分を深く知ることで、次の一歩に繋がる「Iメッセージ」、使ってみてくださいね。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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