労基法改正を前に36協定のチェックを!労働基準法改正! 残業時間を削減せよ

改正労働基準法では、長時間労働抑制のために時間外労働の割増率を引き上げました。時間外労働を行うには労働者と使用者の間で、いわゆる「36協定」を結ぶ必要があり、行政も36協定が適正になされているか、監督指導を強化しています。

» 2010年04月30日 17時04分 公開
[SOS総務]
SOS総務

 改正労働基準法では、長時間労働抑制のために時間外労働の割増率が引き上げられます。時間外労働を行うには労働者と使用者の間で「時間外・休日労働に関する労使協定(労働基準法第36条で定めているため「36協定」と呼ぶ)」を結ぶ必要があり、改正法施行を前に行政は36協定が適正になされているか、監督指導を強化しています。

 労働基準法では、原則として法定労働時間(1週間40時間、1日8時間)を超えて労働者を使用することを禁じています。しかし実際には、業務の都合により法定労働時間を超えて使用する必要も出てきます。そこで労働基準法では、労使が合意の上で協定し労働基準監督署に届け出たものであれば、同協定で定める延長時間の範囲で法定労働時間を超える労働について許すものとしているのです。

 36協定は、事業場ごとに「使用者」と「労働者を代表する者」とが締結します。労働者を代表する者とは、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、ない場合は投票や挙手などで選出した管理監督者以外の労働者の代表です。労働者代表を投票により選出していないなど不正である場合は、協定の効力が無効となるため注意が必要です。

 36協定では、選択した一定期間について法定労働時間を超えて延長する労働時間数を、表の限度時間内で定めなければならず、これを超えてしまう時間外労働は違法となります。しかし、業務の都合などでさらに限度時間を超えて労働させる場合は、「特別条項付き協定」を締結すれば可能になります。

 今回の改正では、この特別条項付き協定を締結する際、時間外労働の割増賃金率(※)を25%を超える率とする努力義務が課されました。つまり、割増賃金率を引き上げるかどうかは労使の自由ですが、協定締結の際の話し合いによる自主的な引き上げを求めているのです。

限度時間
期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1カ月 45時間
2カ月 81時間
3カ月 120時間
1年間 360時間
注:1年単位の変形労働時間制を適用している場合は限度時間が異なります。なお、限度時間が適用されない業務もあります

※改正後の割増賃金率引き上げは次の2段階で行われる。(1)限度時間を超えた場合は、大企業、中小企業ともに25%を超える割増賃金率とするよう努めること。(2)大企業に限り(中小企業は3年ほど猶予)、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%以上とすること

特別条項付き協定に定めるべき事項

  • (1)特別の事情(臨時的なものに限る)
  • (2)特別に延長する場合の手続き
  • (3)特別延長の時間
  • (4)特別延長の回数(1年の半分まで)

改正により追加された事項

  • (5)限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること
  • ※(5)の率を、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めること
  • ※そもそも延長することができる時間数を短くするように努めること

 特別条項の参考例は、次のようなものです。

 通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、納期がひっ迫したときは労使協議の上、時間外労働を、年6回を限度に1カ月50時間までの延長が可能で、1年では420時間まで延長できるものとする。この際の割増賃金率は1カ月45時間を超えたときは25%、1年360時間を超えたときは25%とする。

 協定の文言の間違い、不正な締結、届け出忘れなどにご注意ください。また、長時間労働を抑制する企業努力も求められます。

『月刊総務』2010年3月号 総務の引き出し/労務管理「労基法改正を前に36協定のチェックを!」より