「今日はあまり仕事が進まなかったのに妙に疲れたな」だとか、反対に「仕事量はこなしたけれどあまり疲れなかったな」といった経験はありませんか? 今回は、「1日を3時間ごとのセクションに分割して、それぞれにタスクを割り当てる」テクニックをご紹介します。
前回は、タスクシートとは別にNozbeやOmniFocusなどのタスクマネジメントシステムを用意して、2頭立てで管理する方法をご紹介しました。
今回は、再び1日の時間をどう使うか、という視点に戻り、タスクシート上で時間帯ごとの見積時間が分かるようにすることで、1日の段取りを効率良く付けていく方法を考えていきます。
はい、よろしくお願いします! ではさっそくお聞きしたいのですが、時間帯ごとの見積時間というのは、具体的にはどうやって把握すればいいのでしょう?
そうですね、まずは「なぜ1日の段取りがうまくいかないのか」から考えてみましょう。
一般に、1日という時間は一度に把握するには大きすぎるため、例えば「1日あれば何とかなるだろう」といった油断をしてしまいがちです。「あと10時間ある」と言われたときと「あと3時間ある」と言われたときとでは、後者のほうが「じゃあ今すぐ取りかからなくては」とか「じゃあこっちは後回しにしよう」といった判断を下しやすいですよね。
これまでに話題に挙げてきたタスクシートでは、その日に予定しているタスクをすべてリストアップし、それぞれに見積時間を当てはめることで、その合計時間が分かります。合計時間が分かれば、現在時刻に足すことで終了時刻(=退社時刻)を割り出すことができます。これによって、予定しているタスクを本当にその日中に終えられるかどうかが分かるようになるわけです。
これが分かると、抱えている全タスクを、いわゆる「スタメンタスク」と「ベンチ入りタスク」にあらかじめ分類しておけるわけですね。
はい。とはいえ、その日に収まることが分かったとしても、実際に仕事に取りかかってみると、個々のタスクは何時までに終えなければならないかが見えにくくなります。もちろん大前提である「見積時間内に」ということではあるのですが、「今のペースで本当に間に合うのか?」という気がかりは最後のタスクを終えるまでは解消できない、ということです。
そこで、1日を3時間ごとの複数のセクションに分割し、セクションごとにタスクを割り当てるようにします。といっても、これまでとやっていることに変わりはなく、タスクシートの項目に新たに「節」という欄を設けて、A〜Fのラベルを付けるようにするだけです。
例えば、Bは9時〜12時、Cは12時〜15時といった具合です。こうすることで、Bの付いたタスクの見積時間の合計は3時間を超えてはならず、超える場合は午後(C以降)に回すしかない、という指標になります。これを簡単に把握するために、タスクシートのヘッダ部分に「セクションごとの割り当て時間合計」を追加するのです。
原則として、D(15時〜18時)までしかタスクは割り当てないとすれば、E以降(18時以降)は残業時間帯にやるタスク、ということが朝の段階で分かるようになるわけです。
なるほど。1日を3時間という節に細かく分けることで、そのタスクが1日のどこで片付くかということを可視化するのですね。3時間ごとに強制的に“区切り”が設定されているため、前回紹介した「直近の締め切り効果」も期待できそうですね。
たとえ予定がなかったとしても、3時間ごとの区切りが直近の締め切り効果をもたらすということはもちろんありますが、この区切りにあわせて予定を入れるようにしていくと、心理的な効果は大きく期待できます。
12時、15時、18時というのは、おそらくランチやミーティングにもよく使われる時間だと思います。ここでのポイントは、区切りが一応3時間ごとになっているので、あまりに大きなタスク(終わらせるのに4時間かかるようなタスク)は必然的に分割しようとすることです。セクションをまたぐところで、いったん休憩などを挟むようになりやすいのですね。そういう習慣が付くと、自然と区切りの前に直近の締め切りを設けられるようになるわけです。
普段仕事をしていると、「今日はタスクの数が少なかったのに、なんだかすごく疲れたな」だとか、反対に「仕事量はこなしたけれど、早い時間帯に終わったな」とかいうことがあるのですが、思い返してみると、それって1日の中に「ものすごく忙しい時間帯」と「暇な時間帯」が入り混じっていることが問題なんですよね。
これまでのタスクシートでは、「今日はこのタスク全部は終わりそうにないから、明日に回そう」といったように、「日単位」で仕事量をならす(平均化する)ように心がけていましたが、1日を3時間ごとに節で区切ることで、「1日の中でのタスク量の平均化」ができるようになるわけですね。
そのとおりですね。そもそも、私自身がこの「セクション」という考え方に至ったのも、1日ではあまりにも大きすぎて把握が難しい、というところが出発点でした。3時間たつごとにピットインするような感じで、息継ぎをしながら、1日という時間を使っていくイメージです。
そもそも、この考え方から「先送りにする」を「いついつにやる」という約束に変えることが可能です。私たちは、「今日やるべきこと」がよく分からないままに、なんとなく「翌日にやることにする」と、たいてい先送りだと思って残念になります。しかし、何らかの不確定要素によって「午前中にやること」が「時間の余裕のある午後イチにやる」ことになっても、必ずしも先送りだとは感じません。
翌日にやるとか休日にやるとか安易に決めてしまうと先送りの自責感が強く感じられるのは、“単にやりたくないから”空白のその日に送っておけば、何とかなるだろうと考えているからなのです。
これはちょうど、「机の上にあるものがいっぱいになっているから、ほかの部屋に置いておこう」というようなものです。ほかの部屋も乱雑だったら、少なくともお金などはその乱雑な部屋には置きたくないでしょう。
タスクシートがあると、午後、夕方、翌日の「乱雑さ」が目に見えるようになるため、いい加減に別の時間帯に持っていっても、タスクが片付くわけではないことがすぐに分かります。そこで、「どこに置けば片付くか」を考える習慣が身に付くわけです。
なるほど。先々の自分の予定まで考えに入れて、長期的な視野でのタスクマネジメントが行えるわけですね! 大橋さん、佐々木さん、ありがとうございました!
1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』、『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、『Life Hacks PRESS vol.2』、『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。
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