なぜ、プレゼンの達人たちは「3」の魔術にこだわるのか?最強フレームワーカーへの道

「なぜ永田さんは、ポイントをまとめる場合に3つなんですか?」――。わたしがプレゼンテーションした後によく聞かれる質問です。実はポイントを3つに絞ることは意識してやっているのです。その理由を紹介しましょう。

» 2010年12月02日 12時30分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 プレゼンの後で、聞かれる質問に次のようなものがあります。

 「なぜ永田さんは、ポイントをまとめる場合に3つなんですか?」

 わたし自身、スライドの個条書きに限らず、結論の理由を述べる時、いくつか例をあげる時、分類する時に「3つにする」ことを心がけています。その理由を知らない人は、疑問に思ったかもしれません。これは別に、実際に理由や例が3つあるというわけではないのです。どんな場合でも「3つピックアップしよう」と最初から決めているのです。

 では、なぜ3つなのか? その理由も3つあげてみたいと思います(多少こじつけに聞こえるかもしれませんが)。

理由1:反論の余地を残さない最低限必要な数が3だから

 人は何個の理由があれば、「これで十分」と考えるでしょうか? ここに「ベイズの公式」というものがあります。

 詳細は説明しませんが、「ある証拠から仮説がどの程度確からしいか、確率を導く公式です。例えば、A回成功してB回失敗した後の次の1回の成功確率は、(A+1)/{(A+1)+(B+1)}になるといいます。

 これで計算すると、1つの証拠があり、次の証拠も同じ結論を裏づける可能性は66.6%。2つなら75%、3つなら80%です。多ければ多いほうがよさそうですが、4つ目以降は83.3%、85.7%と微増です。

 つまり、3つの証拠があれば次のデータもそれを裏付ける確率が80%。もっとシンプルに言うと、3つ理由があれば8割方正しいということです。要は、なるべく少ない証拠で、かつ高い確率であるのが「3つ」ということなのであります。

理由2:人間の短期記憶に残せるフレーズが3つ程度だから

 「ミラーのマジカルナンバー 7±2」と呼ばれる実験結果があります。人間の短期記憶(ワーキングメモリ)には7つの数字しか入れられないというものです。その後の実験でも、数字であれば7つだが、文字だと6つ、単語だと5つであることが分かっています。

 だとすれば、単語のコンビネーションである文章ではさらに少ないはず。この事から、あるフレーズを聞き手の脳裏に刻み込みたいのであれば、3つ程度が限界なのではないか、と思う次第です。

理由3:プレゼンの達人たちは3を多用しているから

 スティーブ・ジョブズ(アップルCEO)、スティーブ・バルマー(マイクロソフトCEO)、アル・ゴア(元米国副大統領)などプレゼンの達人として知られる人々は、必ずプレゼンを3章に分けています。

 さらに彼らは、商品の特徴や抱えている課題を述べるときにも3つの特徴をピックアップして説明しています。顕著な例として、アル・ゴアのスピーチライターであったダン・ピンクのプレゼンを見てみるとよいでしょう(キャプションで「Japanese」を選んで視聴してみてください。字幕が出ます)。例を挙げるときに、かならず3つピックアップしています。

 3という数字にこだわっている多くの成功事例が物語っているように、3つのポイントにまとめられた説明は聞いていてリズムがあり、聞いていて飽きないし、印象に残りやすいと思います。

 以上が、物事を分割したり、ドリルダウンしたりする場合に、わたしが「3」を意識している理由です。「3」を意識するには、日常的に何かのアクションを起こすときや、何かを判断するときに理由を3つ挙げる練習をしておくことです。

 特にプレゼンにおいては、妥当な数(つまり、3つということです)の論理的裏づけがあると、納得力が違います。ぜひ、みなさんも3つの魔術を使いこなしてみてください。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

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