効率や能率だけの追求から、効果を評価する時代にソーシャル時代の時間管理術

リーマンショックや東日本大震災は、日本人の価値観に大きな変化をもたらしました。タイムマネジメントの概念からも、能率や効率ではなく効果が求められる時代になるでしょう。

» 2012年02月02日 12時10分 公開
[竹村富士徳,フランクリン・コヴィー・ジャパン]

 従来のタイムマネジメントの考え方は、短時間でいかに多くの成果を生み出せるか、無駄な時間をいかに過ごさないかが論点でした。現在でももちろんそういった側面はありますが、果たして、現代社会においても、効率や能率だけを追い求める時代なのでしょうか。


行き過ぎた能率・効率の追求

 2008年に世界中を揺るがしたリーマンショックによる不況によって、そして何より、2011年に発生した東日本大震災によって、日本人の価値観は大きく変化しました。物質から内面、効率から効果や貢献、「私」から「私たち」へと大きく変化を遂げています。今多くの人が、効率や能率だけを追い求める時代は終わったと語っています。

 早稲田大学教授の遠藤功氏は、知識経営の生みの親として知られる野中郁次郎氏との共著『日本企業にいま大切なこと』(PHP新書)の中で、「欧米流の合理性や論理性、効率性一辺倒の考え方や手法にこだわりすぎた結果、あまりも人と人との関係性がギスギスしてしまい、短期志向に流れている」と話しており、能率や効率だけを追い求めるスタイルに警鐘を鳴らしています。

 能率や効率というのは、工業産業時代にいかに少ない労力で、より多くの成果を求めるために合理化を徹底したものです。より大きな変革やイノベーションを必要とされる現在の知識情報社会では、もはや通用するものではありません。

 時代は工業産業時代から知識情報社会に移行しているにもかかわらず、依然として時間管理やビジネスにおけるマネジメントは、まだまだ工業産業時代のまま残っているものが数多く存在しています。

知識労働者の生産性を上げる

 スティーブン・R・コヴィー博士の『第8の習慣』の中で紹介しているように、ピーター・F・ドラッカーの言葉を借りると、このような時代に必要なのは次のようなことです。

 21世紀のマネジメントの最も重要で真に特筆すべき貢献は、製造業に従事する肉体労働者の生産性を50倍に引き上げたことである。21世紀にマネジメントがなすべき最も重要な貢献は、「知識労働と知識労働者」の生産性を同じように向上させることである。20世紀の企業の最も価値のある資産は「生産設備」だった。それが21世紀には、企業でもその他の組織でも、最も価値のある資産は「知識労働者」と彼らの「生産性」になるだろう。

 つまり、時代は既に知識労働者の時代へと変わってしまっているにもかかわらず、私たちの仕事のスタイルや仕事の仕方は、相変わらず、工業産業時代のマネジメント手法をとってしまっている組織やビジネスパーソンが非常に多いということです。

 タイムマネジメントにおいてもしかりです。工業産業時代のやり方で、能率や効率ばかりを追い求めても、私たちが心のそこから満足し、ビジネスにおいてもプライベートの人間関係においても、真の効果性を発揮することはできません。

 知識労働者の生産性を上げる鍵となるのは、能率や効率ではなく「効果」です。創造力にあふれた効果的な成果を得なければならないのです。効果といっても、ピンとこないかもしれません。効果的とは、結果に対して良い影響を与えるということですが、それだけでは効率と対して意味は変わりません。タイムマネジメントにおける効果とは何を意味するのでしょうか。

 次回以降は、効果的な結果を得るために持つべき視点や活動を具体的に紹介していきます。

連載『ソーシャル時代の時間管理術』について

 本連載の内容は、2011年12月に発売された『タイム・マネジメント4.0―ソーシャル時代の時間管理術』(竹村富士徳・著、プレジデント社・刊、255ページ、1680円)をもとに作成しています。

 フランクリン・プランナー・ジャパンは、この「タイム・マネジメント4.0」を実践するための、第4世代時間管理ツール「フランクリン・プランナー」を提供しています。


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