海外に住むという経験を持つ20代にしておきたい17のこと(3/3 ページ)

» 2012年12月11日 11時00分 公開
[本田健,Business Media 誠]
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本当の貧困を知れば、いまの状況に感謝できるようになる

book 『20代にしておきたい17のこと』(だいわ文庫)

 20代で旅に出ると、その後の感性が変わってくるように思います。20歳のときにアメリカに行って、大富豪と一緒に暮らすという経験をしましたが、帰国後、貧困も知らないといけないと思って仲間を募ってフィリピンに行きました。トップクラスの豊かさを知ったり、世界でもっとも過酷な労働といわれるさとうきび畑で、地元の人に交じって働いてみたりしました。

 フィリピンのスラム街を訪ね歩いて、まったく希望もなく、お金もなく、尊厳もない暮らしをしている人たちのところでボランティアもしました。そして、自分はなんて狭い世界しか知らなかったのかと思い知りました。

 それまでの私にとって、「世界」とは自分とまわりの人たちでつくっているものでしたが、まったく違う国の違う社会システムの中で、日本のことなど何も知らない人たちがいっぱいいるわけです。その現実に打ちのめされました。

 例えば、朝から晩までゴミだけを集めて生活している人たちがいるわけです。毎日せっせと働いたからといって、次の日から給料が上がるわけでもありません。逆に安く買い叩かれて、収入がない日もあります。そうなるとごはんは食べられない。そこまで将来がない、苦しい現実から逃れる出口がない状況というのは、どんなに不況だといわれる日本でもあまり考えられないでしょう。そんな生活が小学生から始まって、よほどの奇跡が起きない限りそこから出られることはないのです。

 日本に帰ってきて、屋根があって雨がしのげることだけで、どれだけありがたいか実感しました。その体験があるから、たとえ風呂なしのアパートに住んでも少しも気にならない。ありがたいと感じる「最低線」が下がったのだと思います。自分の中の最低線とは、自分が幸せを感じられるギリギリの状態ということです。

 不便な生活をしていると、おまけでついてくるものもあります。例えば、お風呂のついているアパートに住んでいる友人に、お風呂を借りにいくのがうまくなりました。気軽に泊めてもらったりごちそうしてもらうのが上手になったのも、そういう体験のおかげです。

 「ごはんが1日1回食べられるだけでもいい」「命の危険にさらされないだけありがたい」「安心して生活できる、そういう空間があるだけでもなんて幸せなことなんだ」ということを体験するためにも、海外に出ることは有益だと思います。

(次回は「運について学ぶ」について)

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