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分からないことを聞かれたら――学びのチャンスを逃してませんか田中淳子のあっぱれ上司!(2/2 ページ)

後輩からの質問。知らないことなのに「それ、知らなくても大丈夫だから」「その技術、うちの部署で必要ないから知らなくてもいいよ」と答えたことはありませんか?

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「後輩をだし」に一石三鳥の効果

 先日会った中堅エンジニアのアプローチはとてもユニークだった。自分自身が「今は知らなくて、学びたい」と考えていることがあったら、後輩とともに有識者に会いに行くというのだが、そのやり方は少し手が込んでいる。曰く「後輩をだしに使う作戦」。

 自分が学びたい、知りたいと思っている事柄についてまず後輩に聞く。「これって知っている?」と。たいていの場合、後輩は知らないと答えるので「そうか、だったら、一緒に習いに行こう!」と誘い、社内のその分野の有識者を訪ねる。有識者には「うちの後輩が○○を学びたいというので、教えてやってください。ボクも一緒に学びに来ました」と言うそうだ。若手が学びたいと言ってくると先方も懇切丁寧に教えてくれるものらしい。

 しかし、後輩には多少レベルが高い内容である場合も多く、ちんぷんかんぷんになる。知識と経験面でアドバンテージがある先輩のほうが先に理解できる。すると職場に戻って「学んだことを復習しよう」といい、後輩に今度は自分で説明するのだそうだ。これによって、先輩は自分の理解をより深められるし、後輩も再度説明を受けられるので、かなり理解が深まるらしい。

 「僕はこうやって、会ってみたかった社内の有識者のところに会いに行きました。若手をだしにすると一石二鳥、一石三鳥の効果がありますよ」と微笑む。

 なるほど。「後輩をだし」に「社内の有識者」に会いに行き「自分も一緒に学んでしまう」。後輩も自分も同時に知識や技術が身に着く。互いに人脈も作れる。「部下や後輩を指導するのはいいけれど、もし分からないことを聞かれたらどうしよう?」と不安を感じたり「自分もまだ知らないことば多いのに、後輩を指導するなんて無理」と腰が引けたりしている人に時々出会う。

 でも、自分ひとりでなんでも解決しようとせず、社内外の人脈をうまく活用することも大事だ。もし、知らないことを質問されたなら「今こそ自分も学ぶチャンス」とばかりに部下や後輩とともに学ぶことを楽しんでしまえばよいと思う。部下や後輩を育てることは、上司や先輩にとってもまた学び成長できるチャンスなのだから。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


  • 著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など
  • ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!
  • Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko

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