小日向: 大野治長です。治長は、長身、色白、イケメンだったそうで、秀頼に通じるところがあります。
秀吉は天下を獲ってから、多くの側室を抱え、側室にせずとも一夜限りの相手をした女性がたくさんいたようです。宣教師のルイス・フロイスは『日本史』の中で、大坂城には300人ほどの女性がいて、宮殿というよりも遊郭のようだったと記しています。それでも秀吉になかなか子どもが生まれなかったのですから、秀頼の出自を疑う気持ちも分からないでもありません。
編集部F: 治長はどのような人物なのでしょうか?
小日向: ドラマでも紹介されている通り、母は大蔵卿局(おおくらきょうのつぼね)です。大蔵卿局は茶々の乳母でした。真田丸の中では、最近やけに大蔵卿局が権力を持っているのが気になりますよね(笑)。治長は、そんな母の紹介で秀吉のお世話をする馬廻り衆になって、豊臣家に仕えるようになりました。
編集部F: えっと、治長の実母が茶々の乳母なのですよね。すると二人は、身分は違えど兄妹的な距離感にあったわけで、その間に秀頼が生まれたというのは……。なかなかセンシティブですね。
小日向: まぁ、戦国時代には同じ血筋同士の結婚はよくあることですから。
編集部F: ちなみに、治長はどのような最期だったのですか?
小日向: 大坂夏の陣で徳川軍に追い詰められ、大坂城本丸近くの山里曲輪で秀頼や茶々、大蔵卿局などとともに自害しました。享年47歳だったようです。
編集部F: 秀頼もそうですが、治長も母親がすぐ近くで目を光らせていて、さぞかしやりにくかっただろうと思います。ただ、母のおかげで豊臣家の中枢にいられたのも事実ですから、どちらが治長の人生にとって良かったのかは分かりませんね。
ドラマの中で、真田昌幸の母・とりが死ぬ間際に放った「人は誰も宿命(さだめ)を持って生まれてくる。遅いも早いもない。おのが宿命に気付くか気付かぬか」というセリフが胸に刺さりましたが、治長がもし早く生まれていても、そのころの豊臣家は錚々たる武将がいたので、ますます何とも言えませんね。
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