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池澤夏樹が明かす作家哲学 「“飽きる”ことも仕事のうち」池澤夏樹インタビュー【後編】(5/5 ページ)

» 2019年07月31日 05時00分 公開
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それでも逃れられない「産みの苦しみ」

――挑戦し続けるために、自分に課していることはありますか。

池澤: 結局、目の前のプランを考えているだけです。とにかく目の前にアイデアが沸いて、これをどう作品にするのか、取りあえず書きながら考えるだけですよ。エンディングが(あらかじめ)大体分かっていて書いている話もありますが。

 僕は今(日経の連載小説)『ワカタケル』を書いています。彼(主人公のワカタケル)はある時点で死ぬからそれで終わるだろう。しかし、そこまでどう膨らますかをあまり分かっていないまま(連載を)始めたけれど、怖かったですね。

 半分くらいまでいったところで、「これで何とかなるかな」と。古事記に出てくる人のほかに、サブの重要な登場人物が増えてきて活躍し始めると、面白くなってきましたね。元となる原典から(ストーリーが)離れられるからです。そこまでいって、「ああ、うまくいってるんじゃないかな」と思えました。

 そうすると、さあ次の展開はどうするか……。最後にひっくり返したいが、どういう形にするかと。今、ほぼ最後まで頭の中にできています。(連載は)8月いっぱいなので、随分気が楽にはなりましたね。

――池澤さんでも、「産みの苦しみ」というものがいまだにあるのですね……。

池澤: (連載開始した)最初の3カ月くらいは、「まずかったんじゃないの、このアイデアは。1年持たないんじゃないの?」と。悩むというか、「何も出ないなぁ」と、明け方目が覚めて考えるのです。それで、「ああ、こうやればいいんだ」と(アイデアが)出てくるのです。大体いつもそうですね。

――若いクリエイターや仕事に悩む人にとって、むしろ勇気付けられるエピソードですね。ありがとうございました。

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