TBSは同じ時期に、系列局の東京支社の集約を検討していた。20年4月にTBSの佐々木社長と系列局の社長で構成する「JNN系列強化経営者会議」を立ち上げ、系列各社の経営基盤の強化と、系列全体の合理化について話し合いを始めたところだった。
系列全体の合理化を検討する背景には、放送局の経営環境の変化がある。地方局の広告収入は東京支社の売り上げが大きな部分を占めている。なぜなら大手のスポンサーの本社が東京に集中しているからだ。しかし、インターネット広告費が毎年伸びていて、テレビメディア広告費は2019年に初めてインターネット広告費に抜かれた。
しかも、その差はコロナ禍でさらに広がっている。「2020年日本の広告費」(電通)によると、2020年の日本の総広告費は6兆1594億円で、前年比88.8%に減少。その中でもインターネット広告費は前年比105.9%の2兆2290億円に伸びた一方、テレビメディア広告費は前年比89.0%の1兆6559億円と大きく落ち込んだ。
この状況でTBSが検討していたJNN系列全体の合理化の一つが、系列各社の東京支社オフィスの集約だった。21年3月にオープンする「SPACES赤坂」が候補にあがった。TBSホールディングスメディア企画室の宮崎栄輔室長は次のように説明する。
「キー局と系列局との既存業務の合理化やコストカットは、すでに他系列も検討を始めています。JNNでも昨年から系列局東京支社の合理化の検討を始めました。そのタイミングで話が出てきたのが大分放送のシェアオフィス移転計画と、赤坂に新しくできるシェアオフィスの計画でした。
TBSとしてコンサルタント会社にも依頼して、系列局の東京支社のシェアオフィス化についての検討を進めました。系列が集まるのであれば、TBSとして協力できることもあるので、新しいチャレンジをしてみませんかと各局に声をかけました」
TBSでは系列の新たな取り組みとして、20年7月から各社に東京支社の「SPACES赤坂」への移転を呼びかけ始めた。もちろん、東京に自社ビルを持つ局や、東京支社の人数が多い規模の大きな局はシェアオフィスへの移転はしづらい。それでもシェアオフィスの移転を決めていた大分放送に加えて、続々と各社が手を挙げた。20年11月には10社、今年3月までに13社が移転を決めた。TBSでは年間のコスト削減額が13社の合計で1億円以上になると試算している。
「SPACES赤坂」は新築物件だったため、レイアウトなどの交渉を柔軟にできることも魅力だった。系列各社とリージャスとの交渉をTBSがサポートして、東京支社のシェアオフィス化が実現。JNN系列28社の約半数が9月までに入居することになった。
TBS佐々木卓社長に聞く、地方局の東京支社をシェアオフィスに移転する狙い 「JNN系列をさらに強い集団に」
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