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パナソニックの“スピード開発”を後押し、Shiftall 岩佐CEOに聞く(後編)家電メーカー進化論(8/8 ページ)

» 2021年05月28日 07時00分 公開
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 岩佐氏は、事業のゼロイチそのものは難しいとしつつも、事業を10まで育てて、既存の事業部門で扱えるサイズまで大きくすることには、特に大きな不安はないという。

 「既存の事業も規模の縮小傾向にあるので、担当者も“10に育つまでは何もしない”というモードでは会社がもたないことは分かっている。既存の事業の人たちも手を伸ばしてくれるし、我々も多分5〜6くらいまでは手掛けられると思うので、お互いの努力次第で、意外と担当を交代できるのではないかと思っている」(岩佐氏)

 そして岩佐氏は、「私は中の人じゃないので適当なことは言えないが」と前置きしつつ、「私が社員として在籍していた当時と比べると、新規事業を生み出す上で恵まれた環境になっていると思う」と語った。

 「社内では、新しいことをやれやれと言われていて、全社が“出る杭”を求めている。『やりたい』と手を挙げたら、活きのいいやつだとみんなが引っ張り上げてくれる。私も含めて多くのメンター陣がいて、『こうやったらできるんだよと』と肯定する。

 メールのみ、その前のメールすらなかった時代と比べると、TeamsやSlackなどのコミュニケーションツールも発達し、さまざまな役職の人が参加している。そういったツール内でちょっと話せば、私だけでなく役員や本部長クラスの人たちも『お前面白いこと考えてるな』と応えてくれる。そういうコミュニケーションがすごくやりやすくなったと感じている」(岩佐氏)

 またコロナ禍の影響について岩佐氏は、大きくプラスになっているとした。特に、オンラインミーティングの増加が良い傾向をもたらしているとした。

 「コロナ禍は、“リアルに会わないのが当たり前で、それは失礼じゃない”という状況を作ってくれた点で、新しいこと始めるにはいい影響があったと思っている。以前なら、遠方の拠点にこういう先輩がいるから聞いてこいとか、相談させてくださいという場合、出張がないとなかなか実現できなかった。

 また以前は、電話会議は失礼かなという感覚があったが、今はリモートで全部相談できるようになった。ハードウエア開発にあたって(製造拠点である)深センなどに行けないのは大打撃だが、コミュニケーションにおいては結構いい影響があったと思う」(岩佐氏)

 全体的にポジティブに語ってくれた岩佐氏だが、それは“以前と比較して良くなっている”だけで、まだまだ課題は多いという。

 「スピード感は上がってきているが、世の中のスタートアップのスピード感は、毎年どんどん早くなっている。まだそれに追従できるスピードではなく、むしろ非常に遅いと頭を悩ませている。この点については特効薬がないので、カルチャー&マインド改革を続けるしかない。

 いろいろセンシティブな問題があるので詳しくは言えないが、ココとココとココを変えればいいという点は見えてきた。それらのポイントに対してどういう施策を打てば良いか。“日々模索”が現在の私の立ち位置だ」(岩佐氏)

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