そのほかのユニークな取り組みとして挙げられるのが「VR(バーチャルリアリティ)空間内でバーチャルLUMIXを販売する」というものだ。この一言で理解できる人はほとんどいないと思うが、「VRChat」と呼ばれるVR空間サービスの中で使えるデジタルカメラ「LUMIX」の3Dモデルを販売するのである。
VR空間内では、ユーザーが思い思いのアバター(仮想キャラクター)を利用できるが、そのアバターが持つ小道具やアクセサリーの1つとして、LUMIXの実際のモデルを1つ500円で販売し、使えるようにしている。
まだまだほんの一部の人の間でしかブームになっていないVR上で、その中でしか使えないものを販売しており、実際には、1万個売れても500万円の売り上げにしかならないが、岩佐氏は「そこに意味がある」という。
VR空間内で利用できる「LUMIX S5」の利用イメージ(出典:Shitallのプレスリリース)
VR事業に取り組むにあたって、21年2月にVRChat内で実施された「クロスマーケット2」と提携し、ワールド内のメインエントランスにVRデータ販売についての大型バナー掲示も行った(出典:Shitallのプレスリリース)
「Panasonic」の企業ロゴや「LUMIX」などのブランドロゴを、メディアや商業施設などに掲出するためには、それぞれの場所ごとにさまざまなルールが存在する。しかしVR空間内でロゴを掲出するためのルールなど、当然あるはずもない。
「誰かがロゴを使いたいとなったときに、ルールがないと『ルールがないからロゴを使えません』と否定してしまう。でもやってしまえば、例えば誰かがゲーム内に(薄型テレビ)『VIERA(ビエラ)』のロゴを登場させたいと思ったときに、『岩佐さんがLUMIXでやってましたよ?』と見せられる。そういう事実がすごく大切だ」(岩佐氏)
実際のカメラモデルの販売やロゴ掲載に当たっては、LUMIXシリーズを開発・製造・販売するパナソニック アプライアンス社のイメージングビジネスユニットの経営陣に掛け合って、「効果は読めないけれど、プロモーションになるなら」とOKをもらい、データやロゴの承認を得て発売に至った。つまりビジネスの規模ではなく、新たな前例を生む一歩を踏み出すことが重要というわけだ。
「詳細は言えないが、『こんなことをやりたい』という相談は矢のように来ている。『流通部門に聞いたら難しいと言われたのですが、どうやって売ったんですか?』といった質問が増えており、そういう事実から、ここまでやってきたことの成果も、少しは出ているのかなと思っているところだ」(岩佐氏)
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