岩佐氏は現在、スタートアップ的なモノの考え方やコトの進め方をパナソニックの社内に植え付けている状況だが、「とても順調に進んでいる」と語る。
「植え付けるだけでなく、自社でできないことを我々が受け入れることもある。例えば『こういうものを作りたい』という相談をAの部門に断られた場合でも、予算さえうまく取れればShiftallが製造する、パナソニックで作っているものを流通や販売だけShiftallが担当するなど、自由に動き始めている」(岩佐氏)
さらに19年からは、パナソニックから人材も受け入れている。
「現場のスピード感や判断の柔軟さなどは、実際に見て体験しなければ分からないので、武者修行に来てもらっている。薄利多売の競争をしている既存事業では、原価を300円上げる決断などなかなかできないが、我々はそんなことで悩むヒマがあったら300円の部品を追加して価格を1000円上げれば良い、となる。
例えば、米Oculus(オキュラス)のVRゴーグルが1000円高くなったらみんなが買わないなんてことが起きないように、新しいカテゴリーの製品の場合は相場観がないからだ。こんな人材交流も進めており、なかなか楽しいことになっている」(岩佐氏)
パナソニックが新たな100年を築き上げるに当たって“新規事業を次々と創出する”、つまりゼロイチを行うことは重要だ。しかし0を1にするだけでなく、同社の既存事業のようにビジネスを拡大、つまりゼロイチから10、そして100まで持っていく必要がある。
「パナソニックは10を100にするのがめちゃくちゃ得意で、ゼロイチがすごく苦手な会社だった。しかし最近では新規事業系の人材がたくさん入ってきて、ゼロイチが得意にできるように頑張っている。次の課題はたぶん1から10くらいだろう。ここは、我々Shiftallや私が関わっている組織で、5から8くらい、つまり3万台、5万台くらいのサイズには持っていけると思う。そして10まで持っていければ、既存の仕組みに載せることで拡大できるようになる」(岩佐氏)
Shiftallが現在開発を進めている、作り置き食材の冷蔵保存と、遠隔からの加熱ができる調理家電「Cook'keep(クッキープ)」(近日中に発売予定)。このような、これまでにないコンセプトの製品を作るのがShiftallの大きな特徴で強みだ
こちらは専用アプリを利用して外出でもメッセージが見られる、手描きメモによるコミュニケーションデバイス「Croqy(クロッキー)」(近日中に発売予定)
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