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美容家電No.1ブランド「ヤーマン」、ブランドを支える開発力のワケ家電メーカー進化論(6/7 ページ)

» 2021年10月01日 07時00分 公開

年間20アイテムを生み出す企画・開発力と販売力

 数々のヒット商品を生み出すヤーマン。そのベースにあるのが、業務用の計測機器販売という出自による開発力の高さだ。そしてさらに、スピードを重視しながらアイデアを形にしていく柔軟さがある。

 「弊社は組織がフラットで、誰が何を言ってもいいという空気があります。開発部に所属していなくても製品企画はできますし、実際『営業に所属しながら企画担当もしている』というケースは少なくありません。そして『いいんじゃないか?』となったらとりあえず試作してみる。確かに量産試作前にストップした製品も多いのですが、それはまた数年後に、別の企画で活用できることもあります」(戸田氏)

 この試作の積み重ねは知見の蓄積となり、次の製品の開発スピードがアップするメリットもある。また、筐体設計、電気設計とリレー形式で開発を進めるのではなく、各グループから1人ずつが参加するユニット型で開発している点もスピードに貢献している。これらの積み重ねが年間20アイテムを生み出す開発力につながっているのだ。

 こうしてスピード開発した製品について、ヤーマンでは販売戦略も練られている。ヤーマンの強みの1つが、直販、通販、家電量販店によるマルチ販路だ。ヤーマンの販売系部門は、通販部門、店販部門、直販部門、海外事業部の4つがあるが、その中でも特に力を入れているのが直販部門だ。

 「直販では、自分たちが売りたい製品を販売できます。例えば、卸先の販売では競合の兼ね合いで採用されないことや、バイヤーが仕入れないと判断することもあります。しかし当社は『今までにない新しいものを生み出す』が企業コンセプト。取引先が採用しないから売れない、ではなく自分たちが良いと思ったものを売るためにも直販を強化しています」

 家電量販店や百貨店など実店舗を持つ卸先で販売するメリットの一つとして、お客さんが実際に手にとって試すことができる点がある。しかし新しいジャンルの製品は、試用用の棚に陳列されないことも多い。そこで直販での販売実績を用意することで量販店でも置いてもらいやすくなるというわけだ。

 ヤーマンの売上高は21年4月期で366億円。現在はそのほとんどが個人向けの美容家電だという。コロナ禍においても、リモート会議によるニーズや、マスク生活による顔のたるみなどを気にする流れから、売り上げは下がることなく順調に伸びているという。

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