総務省の調査によると、21年10月の衆院選(総選挙)の投票率は55.93%。これに対し、20代の投票率は36.50%と、平均を大きく下回ったほか、10代の投票率(43.21%)も下回り、世代別では最低となった。
前回の参院選(19年7月)も、全体の投票率が48.80%だったのに対し、20代は30.96%にとどまった。総選挙同様、世代別でも10代(32.28%)、30代(38.78%)を下回り、20代が最低を記録した。
総務省は若年層の投票率について「いずれの選挙でも他の年代と比べて、若年層の投票率は低い水準にとどまっている」と指摘。このため「特に若年層への選挙啓発や主権者教育に取り組むとともに、関係機関などと緊密な連携を図り、投票率の向上に努める」としている。
18歳選挙権の解禁で、教育現場での主権者教育に注目が集まっている。実情はどうか。総務省が全国1963の選挙管理委員会(都道府県47、指定都市20及び行政区175、指定都市を除く市区町村1721)を対象に行った調査によると、20年度に各選管主催の選挙に関する出前授業の数は556と全体の28.3%にとどまった。コロナ禍前の19年度でも738と全体の37.5%だった。
内訳を見ると、都道府県や政令指定都市の出前授業実施率が9割以上(20年度でそれぞれ93.6%と95%)だったのに対し、市・特別区が43.9%、町村が8.5%にとどまるなど、自治体規模が小さくなるにつれて実施率が大きく減少しており、自治体間で格差が生じている。
主権者教育のメインとなるべき高校でも、実施率の低さが課題となっている。20年度に各選管主催で出前授業を実施した高校は全体の18.4%。コロナ禍の影響があったとはいえ、前年度も25.5%と、16年度(38.3%)をピークに、実施率が減少傾向にある。
ただ、文部科学省が高校3年生を対象に実施した調査では、主権者教育の実施率は95.6%となっており、教育現場では選管ではなく、教育委員会が主権者教育を支援しているとのデータもある。
若者の投票率が下がることで損失が生じるとする研究もある。発表によると、加齢経済学が専門で、東北大大学院の吉田浩教授は過去40年の国政選挙での「50歳以上(高齢世代)」と「49歳以下(若年世代)」の投票率を比較。その結果、2世代間の投票率の差が広がるにつれ、国債の新規発行額が増加傾向になり、計4万7480円分の負担増になることが分かったという。
投票率と社会保障給付の関係についても分析したところ、若年世代の投票率が1%下がるとともに、若年世代向けの支出と高齢者向け支出の差は約3万72円拡大したという。こうした分析結果を組み合わせた結果、若年世代の投票率が1%下がると、年間約7万7552円の損失につながると結論づけた。
10日投開票の参院選。選挙結果とともに、若年層の投票率の動向にも注目が集まりそうだ。
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