レンズの醍醐味にはいろいろある。ワイド撮影にこだわる人もいれば、望遠にこだわる人もいる。そんな中、地味ながら人気があるのが、マクロ撮影である。ワイド系のレンズは近距離で撮れるものも多いが、本格的なマクロ撮影をやろうと思ったら、マクロレンズの出番となる。
だが、こういう特殊レンズは高い。中古でもなかなか数が少ないため、4万〜5万円というのが相場のようである。3000円の本体に5万円のレンズというのも、なんだか生き方として間違っているような気がするので、なかなか買おうという気持ちにならない。
一眼レフを持っている人は経験的に知っていることかと思うが、実はレンズというのは、逆向きにするとマクロ撮影ができる。できるとは言っても、そもそもがきっちり固定できるようなものではないので、手でレンズとボディを押さえながら撮るわけだが、それなりにマクロ撮影ができる。
レンズを逆向きに取り付けるための「リバースアダプタ」というのもあるが、まあ特殊な使い方ではあるので、普通の人は無理して欲しいという気は起こらないものである。
そんなお手軽マクロ撮影でちょうどいいのが、接写リングである。別名中間リングとかエクステンションリングとか言ったりするが、これはなんと言うこともない、レンズと本体の間に挟む延長管で、マウントが双方にはまる形状になっている以外は、本当にただの筒である。だがこれを付けると、標準レンズでマクロ撮影ができる。
その代わり、これを付けている間は近くにしかフォーカスが合わないが、普通に遠景を取りたくなったら外せばいいわけで、エクステンションリング1つで1本の標準レンズでも、撮影のバリエーションが大きく広がる。
こういうアクセサリーこそ、中古市場が狙い目である。新品はこんな筒のクセに1万数千円ぐらい平気でするものだが、中古市場ではほとんど買い手が付かないため、モノさえあれば3千円前後で手に入る。
以前購入したNikon用エクステンションチューブ3点セットは、確か1000円だった。鏡筒部が樹脂製だが、十分役に立つ。今回は金属製のOLYMPUS OM用のを、3000円で見つけた。
接写リングをかませると、レンズ位置が離れるわけだから、正確には露出が変わってくる。以前プロのカメラマンに、露出補正の計算方法を教えてもらったが、よく分からなかった。以前はPenFで接写リングを使っていたので、自分で露出を決めざるを得なかったのだ。適当に1段ぐらい明るめに撮ったら、ちゃんと撮れていた。まあネガだからなんとかなったのだろう。
もっとも普通の一眼レフならTTL測光なので、AUTOで撮ればだいたいなんとかなるものである。OLYMPUS OMシリーズは、シャッター幕を測光する本物のTTLなので、こういった接写リング撮影は得意なはずだ。
さっそく撮影してみたので、いくつかご紹介しよう。絞りは開放だと、ものすごく深度が浅くなる。雰囲気はすごく出るが、風で揺れる花などは撮りにくいので、場合によってはF4ぐらいに絞った方がフォーカスは合いやすい。
しかしこのあたりは、もうレンズとの相性である。開放によるボケが綺麗なレンズのほうが、撮っていて気持ちがいい。
フォーカスリングは、回せば一応ピントが送れるが、可変範囲はそれほど大きくないので、構図に気をつけながら、カメラ全体でフォーカスを取るような使い方になる。
通常の撮影と違っていろいろと不自由ではあるが、針穴から覗いているような接写が撮れるというのは、楽しいものだ。だが今はそれほど被写体には恵まれていない時期である。花の季節を待ち遠しく思う。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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