――デジタル処理能力の増大が、カメラのデザインや機能、求められる役割までも変容させてきたということですね。その変化の兆しを感じたのはいつごろでしょう。
今村氏: 転換期だと感じたのは2005年ごろでしょうか。2004年ごろまでは撮像素子の高画素化に対応するべく開発を行ってきたのですが、2005年ごろから、「どのような需要を満たしたいか」というアプローチ――言い換えれば提案型製品の考案――に変化してきたと思います。個人的にも「デジタルカメラは銀塩カメラの置き換えなのか?」を自問自答した時期があり、それは2005年ごろだったかと記憶しています。
「デジタルで撮る」だけではなく、使い方や撮った後の楽しみ方といった部分までを考えるようになったのもこのころです。そのころはちょうど、デジタルカメラに顔認識機能が搭載され始めた時期なのですが、その処理を高速に行うには認識プログラムを画像処理エンジンに組み込む必要がありました。いま思えば、それが画像処理イコール「レンズから入った光を画像データへと処理する」ではない発想、思想のはしりだったかと思います。
宮田氏: わたしはQV-770/QV-5000SXのころから(編注:QV-770は1997年9月、QV-5000SXは1998年4月発売)、画像処理エンジンの役割を再考し始めました。当時はデジタルカメラに動画撮影機能が搭載され始めた時期で、ハードウェアの進化が一段落し始めた時期とも言えます。「したいことがあるから画像処理エンジンを開発しよう」と考え始めたのはそのころですね。
今村氏: EXILIMエンジンは3年ほど前の3.0(編注:現在は5.0)から画像処理専用のプログラマブルな回路を組み込み込んだ構成となっています。回路の設計から製品搭載までは2年ほどの時間がかかりますから、製品に付加価値を持たせるためには「したいこと」の予測が欠かせなくなるのですが、プログラマブルな回路とすることで設計や実装が容易になったのです。
(後編に続く)
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