本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はレイラからの紹介です。
小雪ちらつくこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。
ミソノさん、あけましておめでとう。
うふふ。年が明けてだいぶ経ちますが、新鮮な気持ちですよねー。今年もよろしくお願いしますね。
そういえば、ミソノさんは初詣には行った? 初詣と言えば、やっぱりおみくじよね。
あら、レイラさんはおみくじ引くんですねー。
今年は末吉だったわ。「夕立ちはやがて晴れて、こずえに涼しく風が吹くでしょう……」と。
私も末吉でした! 「秋の夕べは風が騒いでも、静かに入り江を目指して」とのことでした。なんだか不思議と心の指針になるような気がしますね。
ところでミソノさん、今年お参りした神社の神様が実は「もう死んでいる」って聞いたら、どうします?
えぇっ えーと、どうしましょう。そもそも神様って亡くなるのかしら……。
神道だと天神様みたいに元は人間で死んで神様になった方もいれば、伊邪那美命みたいに死んで黄泉平坂にいる神様とかいらっしゃるから、神様が死んだと言われても「ふーん」ってなってしまうわよね。
哲学者のニーチェが「神は死んだ」って名言を残したと言いますけど、そういう意味でもないですよね。
実は、今回紹介する小説のタイトルが『神は死んだ』なの。
これは現代と、その少し先の未来を舞台にした短編連作小説なのだけれど、お話の冒頭で本当に神様が死にます。
あら、そんないきなり。このお話で出てくる神様って、いわゆるキリスト教の神様ですか?
そうです。唯一神として崇められているあの神様が、死にます。
突然なことで、驚くでしょうねー……。なぜ亡くなったのかしら?
えーと、このお話で神様は自分が救済出来ない人間への償いとして、紛争地帯に暮らすディンカ族の女性に姿を変えて、ある少年を捜す旅に出るのですが、その途中で紛争に巻き込まれ死んでしまいます。
死んだら神様に戻るのではなく、そのまま死んでしまうのですか?
そうなんです。もう、意味が分からないですよね。そんな事して何になるんだ? とか、神様無駄死にじゃない? とか。あと、あそこの神様は自分が死ぬくらいなら旧約聖書のノアの箱船やソドムとゴモラの時みたいに人間の方を滅ぼすのでは? とか、審判の日って無くなっちゃったの? とか。
このお話の中では神様は普通の人間に化けていて、そのまま死んでしまったんですよね? 他の人達は神様が死んでしまったことに気がつくのでしょうか?
野犬が野ざらしで死んでいた神様の死体を食べたことで奇跡が起こり、言葉が話せるようになったことをきっかけに神の死が世界中に告知されます。
えっ……? えっえっ? 野犬が……ええっ?
このエピソードは物語の中盤にある「神を食べた犬へのインタビュー」で語られるのですが、このワンちゃんが神様を食べてからインタビューを受けるまでの経緯がすごく……やるせないです。あと、神様の味について書かれているのは、私の中でポイント高いです。
神様の味……知りたいような知りたくないような。ところで、神様が死んだらどうなってしまうのでしょう? 天変地異とか起こるのでしょうか。
そう、それがこのお話の面白いところで、神様が死んでも、何も変わらないんです。普通に朝が来て、夜が来て、季節がめぐります。でも「世界」は何にも変わらないのに、「社会」がまったく変わってしまうんです。
確かに、あの神様を信じている人が多い国では大変なことになりそうですね。
まず、治安が悪化して、人々は無気力になり、聖職者が自殺します。「橋」や「小春日和」というタイトルのお話がちょうどその時期を描いていて、両方ともすごく面白いです。とくに「小春日和」はネイティヴ・アメリカンの思想を意識したタイトルになってるところや、その結末がすごく好きです。1人の少女の成長と門出を描いた「橋」も全体的な描写や雰囲気が良いのでオススメです。
神が死んだことで社会が混乱した後はどうなるのでしょう?
“C A P A”という組織が世界を立て直すのですが、これがちょっと微妙なのですよね。
微妙、というと?
「神様はわれらを見捨てたもうた。救われる道は子どもにある」と言って、人々は純真無垢な子どもに依存するようになるのです。で、子どもたちの意見に左右されて、大人がまともな判断をしなくなったのを危惧して“児童崇拝予防局C A P A”を設立。という流れなのですが、その予防の仕方が、「どうしてこうなった……」という感じで。
いわゆるディストピアな世界になってしまうのですね。
そうですね。C A P Aの時代を描いた「偽りの偶像」に続き、その数十年後を描いた「救済のヘルメットと精霊の剣」や「退却」では“ポストモダン人類学軍”と“進化心理学軍”という2つの学派が戦争を繰り広げているようすがつづられています。
神様が死んで変わってしまったこと、死んでも変わらなかったことが描かれていて面白そうですね。
そうなのよ。色々考えたくなるお話が多い作品なので、ぜひ読んで感想聞かせて下さいね。
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エリス:64% レイラ:98% サヤ:96%
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