企業のコアコンピタンスもERPで支える――日本オラクルの新アプリケーション

日本オラクルは、Oracle E-Business Suiteの優位性をユーザー企業に紹介するイベント「Oracle Applications Forum2004」を都内のホテルで開催した

» 2004年10月22日 15時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 日本オラクルは10月21日、Oracle E-Business Suiteの優位性をユーザー企業に紹介するイベント「Oracle Applications Forum2004」を都内のホテルで開催した。蓄積されたデータをリアルタイムに活用することで、企業のビジネスに貢献することがE-Business Suiteにおける中心的な取り組みになることが紹介された。また、20日に発表されたバージョン「Oracle E-Business Suite 11i.10」に盛り込まれた機能もユーザー企業に披露された。

日本オラクルの新宅社長

 冒頭、同社の新宅正明社長は、「1995年にOracle Applicaitonsをリリースしてからおよそ10年を経て、ユーザー企業は540社に増えた」と、これまでのE-Business Suiteを振り返る。

 主な導入企業について同氏は、バランススコアカードの導入が同日に発表されたエヌ・ティ・ティ エムイー東北、プロセス型製造業として複雑な業務用件に対応したミツカングループなどを紹介。また、CRMおよびERPシステムとして日本最大規模となったキヤノン販売において、RAC(Real Application Clusters)を使ったパラレルサーバを構築したことや、ノンカスタマイズでE-Business Suiteを導入した半導体企業にも触れた。

 同社は、中国に日本オラクルの拠点を開設し、中国進出を図る日本企業が既に40サイト以上に上っているという。また、中堅中小企業向けにパートナー企業とともに展開するOracle NeOの売り上げが全社的な売り上げの10%へと拡大し、新たなアプローチが軌道に乗り始めたとしている。

 そのほか、同氏は、Oracle On Demandで行うシステムライフサイクルサポートや、名鉄エージェンシーがOracle E-Business Suite On Linuxで、LinuxプラスIA(インテルアーキテクチャ)ブレードサーバの組み合わせを採用し、40%のコスト削減を実現したことなどを同社の取り組みのトピックとして挙げた。

企業のコアコンピタンスをERPで

 日本オラクルは今後、人事や会計といった標準業務や、業種ごとに標準化できる機能だけでなく、各企業のコアコンピタンスを支える機能もOracle E-Business Suiteでカバーしていくという。

 「これからのERPは企業成長を支える基盤になる」と話す新宅氏は、実現するためのキーワードとして、「エンタープライズデータモデル」を掲げた。これは、会計や販売、購買といった「業務系データ」と、それらをベースに従業員が実際の業務に役立てるために利用する「情報系データ」を統合した情報システムを指す。

 エンタープライズデータモデルでは、E-Business Suiteの優位性となるシングルデータモデルをベースに、データウェアハウス(DWH)を新たに構築することなく、販売や購買などに分散する業務系データと情報系データを統合することで、企業活動をリアルタイムに可視化し、「次の手」を打つことができるとしている。

Oracle Information Architecture

 シングルデータベースの強みを特に示すのが、新機能である「Customer Data Hub」(CDH)だ。CDHは、既存のシステムを生かしながら、分散する顧客データを統合するためのモジュール。この日は、CDHを利用した仮想的なユーザー事例がデモンストレーションとして紹介されている。

 仮想企業のVision社は、パソコンおよび家電の量販店への卸売り、そして、音楽のオンライン配信という3つの事業を展開する。従来は、3事業部がそれぞれ顧客情報を管理しており、1人の顧客が分散して幾つものIDを登録してしまう状況が起こることを、防ぐことができなかった。

 そこで同社は、新たなオンラインチャネル「Vision.com」の立ち上げを決めた。Vision.comでは、3つの事業にまたがる顧客を一意に識別するために、「Vision Passport ID」を発行。Vision社の顧客を完全に統合管理することが可能になった。

 顧客データを統合する上で基盤になったのがCDHだ。3事業部に分散していた顧客データを1つのシステムに統合することで、さまざまな効果が期待できるという。

 例えばデータのクレンジングだ。CDHにより、名前や住所などをキーにして、重複データを削除したり、名寄せを行ったりして、データの整理を行うことができる。

 さらに、「名前の一部が同じでかつ住所が同じ」といったデータを探し出し、そこから、「この3名は家族ではないか」と仮想する取り組みも紹介された。例えば、同じ家族と思われるIDが3名登録されている場合に、それぞれの購買履歴を参照する。

 結果として、「映像関連製品の購入が多いがパソコンはまだ購入していない」といった特徴を発見。この事実を基に、「映像をアピールしたPC販売を行う」といった新たなマーケティング戦略を立てることができるという。

 CDHを含めた同社のデータモデルを新宅氏は、「Oracle Information Architecture」(OIC)として紹介した。これは、グリッドによるシステム基盤、エンタープライズデータハブ、ビジネスプロセス、情報アクセスという企業システム全体を提供するアーキテクチャだ。これを、開発フレームワークやシステム管理フレームワークが支える。

 ユーザー企業は、OICにより、安全な標準ベースのシステム構成を利用できること、新たな要件を満たすための機能に簡単にアップグレードできること、さらに、業務プロセスが用途別にプリアセンブルされたモジュールを利用できるといったメリットを受けることができる。

 この日は、リアルタイム経営を実現するためのアプリケーションの提供、コアコンピタンスに関わる部分もOracle E-Business Suiteで提供することの2点に加えて、「最新のテクノロジーをアプリケーションに取り込む」ことが、同社が顧客に提供する価値の柱になることが紹介された。

 具体的には、倉庫管理モジュール「Oracle Warehouse Management System」によって、RFIDを利用した入庫および出荷プロセスをサポートすることが挙げられた。製品に付けられらたICタグを、倉庫に設置されたリーダーが一括して自動読み取りすることにより、バーコードのように人が製品1つひとつをスキャンすることなく、納入された製品データなどを把握することができる。現在は、ICタグ側に読み取り率などの課題が残っているが、将来的には、リアルタイムエンタープライズを実現するための重要な製品になる。

 また、Oracle Procurmentでは、直接材や間接材に加え、企業の購買費用の半分以上を占めると言われる外部への業務委託費用を管理する「Services Procurement」、そして、購買契約の標準化と契約書作成の合理化を目指す購買契約管理機能「Procurement Contracts」も追加された。

多くのユーザー企業が参加した。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ