仕事の遅延をなくす「ゴールからの問い掛け」ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)

» 2009年06月27日 08時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]
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余裕を持てばスケジュールが予定通りに進む……わけでもない

 スケジュールに余裕を持っても、仕事が予定通りに進むとは限らない。少年時代の夏休みの宿題を思い出してみよう。「夏休みは1カ月もある。休みが終わる10日ぐらい前から手を付ければいい」と最初は思う(宿題をやっていないというと怒られるので、親には『毎日ちゃんとやっているよ』と言ってある)。そして「そろそろやろう」と10日前に宿題をやり始めると、予想以上の分量であることに気付く。夏休みの宿題なら笑い話で済むが、仕事でも似たようなことは起こっていないだろうか。

 例えば、進ちょく確認のために、メンバーから週1回の報告をしてもらうと決めたとする。メンバーは「予定通り10%まで進んでいます」と作業の進ちょくを報告する。予定通りに進んでいると聞いたリーダーは「遅れは生じていないから大丈夫だ」と安心する。だが、進ちょくを報告したメンバーの心の中の余裕には、上述した夏休みの宿題と似たようなものがあるのだ。

 プロジェクトは、終盤にさしかかるにつれて徐々に遅れが生じてくるものだ。最初は1週間ごとに確実に10%ずつ進んでいたプロジェクトは、後半になるほど進ちょくが悪くなる。進ちょく率が90%くらいになると、遅々として進まなくなる。完成が近づき、形が見えてくればくるほど「急に仕様が変更になった」など手戻りが発生し、起きて欲しくないタイミングで、なぜがトラブルも起きてしまう。

 進ちょく上はあと10%のはずが、これまでに要した期間と同じくらいの期間が必要になることもよくある。プロジェクトがいつ終わるのかさえよく分からず、プロジェクト終盤ではリカバリもままならない。「いつも言ってるじゃないか。なぜ最初からきちんと段取りをしておかなかったんだ」――最後には、リーダーはこの言葉を繰り返してしまうのである。

「あと何日で終わる?」の効果

 さて、リーダーの立場で進ちょくを確認する方法を考えてみたい。通常、スケジュールを確認する際に用いられるのは「今、全体の何%進んでいるか?」という進ちょく率である。だが、進ちょく率を確認していても、プロジェクトをスケジュール通りに間に合わせるのは意外と難しい。一方、遅延が生じると知りたくなるのは「目標が達成できるまでに、あと何日で終わるか」ではないだろうか。それならば、最初から「あと何日で終わるか」を確認してみてはいかがだろうか。

 「どれぐらい終わった」と聞くことが「過去のスタート地点から現在をたどる方法」だとしたら、「あと何日で終わる」という質問は「未来のゴール地点から現在をたどる方法」だといえる。

 例えば、10日間の作業があるとして、5日が経過していたとする。当初の予定から見た進ちょく率は50%だ。これだけを確認すると問題がないように思える。だが、実際には予定にはなかった作業が発生しているかもしれない。新たな作業が発生した場合、なかなか言いにくいものだ。

 そこで進ちょく率ではなく、ゴールから数えてあと何日で終わるか、目標を達成するために必要な日数はあと何日か、を聞いてみる「あと7日かかりそうです」という報告があったら、完成が2日間遅れてしまうことになる。至急対策を打たなければならない。遅れが出始めた早い段階から対策を取ることができる。

 夏休みの宿題のように、未来が遠いほど余裕があるように思えてしまうが、「あと何日で終わる」というゴールからの問いかけは、常に仕事の終わりをイメージさせる。その結果、「あと何が必要なのか」という仕事の抜けや漏れを意識するようになる。スケジュールだけでなく、早い段階から新たな問題やリスクに気付くことにもつながってくる。

 「サバを読む」「ゴールから考える」といった手法は、「TOC」(theory of constraints:制約条件の理論)と呼ぶ理論に基づいている。年間計画など、長い期間が必要なプロジェクトはスケジュールが遅れてしまいがちである。それを防ぐためには、常にゴールをイメージさせながら仕事を進めるようにする。こうしたコミュニケーションが、マネジャーと現場の意識のズレをなくしていくのだ。

 少しの工夫をすることで、仕事の成果が出せるようになることを祈っている。

著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)

 竹内義晴

テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。


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