「好き」の共通点を探そうビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)

» 2009年08月29日 00時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]
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抽象化で仕事の選択肢が広がった

 わたしには、好きなことを抽象化したことで仕事の選択肢が広がった経験がある。

 1年ほど前、人材育成セミナーのコンテンツを考えていた時のことだ。PowerPointに埋め込む人物の画像の配置を考えていた時、「あれ? 今やっている仕事は、プログラマー時代と何も変わりがない」と気付いた。

 一見すると、セミナーのコンテンツ作りとプログラムの作成は何の関係もない。だがプログラムは人間の動作や必要な業務プロセスを定義して「組み立てる」ものであり、セミナーのコンテンツ作りは顧客が理解できるように内容を考え、ストーリーを「組み立てる」ものだ。抽象度を上げることで、好きなことの本質は何も変わらないということが理解できた。

 そこで現在の仕事であるコーチングについて、どの部分が好きかを洗い出してみた。一番楽しいと感じるのは、顧客と会話をしながら次にどのような流れを「組み立てていく」かを考えている時だということに気付いた。

 さらに、以前勤めていた自動車メーカー勤務時代を思い出してみた。そこでの仕事は、開発中の車をばらして組み立てることだった。ここにもやはり「組み立てる」という要素があった。わたしが自動車メーカーに入ったのは、自動車整備士である父親の影響が大きい。機械を直す父親の姿は、幼少期のわたしにとってとても格好よかった。父親が目の前で見せてくれたものは、機械を分解して「組み立てる」ことだった。

 これらの経験を振り返ると、「好きなこと」の根底は幼いころから今までずっと変わらなかったようだ。

 わたしがプログラマーだった時、プログラム作成に夢中になり、それ以外の仕事はやりたくないと決め込んでいた。プログラマーからコーチに転身した当時は、マネジメントの経験を生かしたやりがいのある仕事ではあったものの、プログラマーをあきらめてしまったような心苦しさを感じたことがあった。

 だが「組み立てることを軸に置けば、コーチング、プログラム、自動車メーカーでの仕事はすべて同じだ」と気付いたことで、仕事の選択肢は格段に増えた。今、記事を通じてあなたにメッセージを伝えているが、文章の構成を「組み立てる」のも好きな仕事の1つだ。「プログラマー以外の仕事はやりたくない」と、自らに制限をかけたままだったら、この仕事には出会えていなかっただろう。

抽象度を上げて、長い視点で考えてみよう

 IT業界の仕事は大変なものが多い。業務に追われてしんどくなった時には、辞職が頭をよぎることもあるだろう。だが、一度上の視点から今の仕事を考えてみてほしい。長い目でみたとき、下そうとしている判断を冷静に見直した方が得策となる場合もある。自分が好きなことに対する「軸」が分かっていれば、次のステップを検討してみよう。

 好きなことについて抽象度を上げて考え、共通点を見つけ出す。そして共通点がぶれないような仕事や職業を選べば、あなたの才能をより生かせるようになるだろう。

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著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)

 竹内義晴

テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。


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