「ホウレンソウ」がうまく回らない理由ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)

» 2009年10月10日 00時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]
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ホウレンソウができる環境を作る

 その後わたしはプロジェクトのリーダーになった。かつて上司がしたのと同じように、プロジェクトのメンバーに業務報告書の提出を求めた。だが、報告書に書かれるのは「何をしたか」ということばかりで、仕事の遅れや解決すべき問題などの重要な情報が書かれることはなかった。

 そこで、メンバーと面と向かって話す時間を作った。一人当たり30分以上の時間を取り、たわいのない私生活の出来事から仕事の悩みまでを話してもらう機会を毎月設けた。最初は、今まで自分がされてきたように「なぜ問題が起きたのか?」と上からの目線で部下に問い詰めるような会話しかできなかったが、メンバーが話をしやすい雰囲気作りを心掛け、悩みを「聞くこと」に徹した

 こうしたやり取りを続けていくうちに、メンバーは「何でも話してくれるし、相談しても大丈夫だ」という気持ちを抱いてくれるようになったのだろう。次第に抱えている問題や悩みを真摯(しんし)に打ち明けてくれるようになった。そこで交わした会話には、「○○さんが話を聞いてくれなくて困っている」「今、家族で○○の問題があり、仕事に集中できない」など、報告書では得られないたくさんの生きた情報が含まれていた。また、報告書を正直に書いてくれる人が増えた。問題が起きていたらこちらからも話しかけるようにしたことで、お互いが声を掛け合う好循環が生まれていった。

 もちろん、ブログやコミュニティーサイトを使うことで、問題をリアルタイムに把握し、情報のやり取りを残すことが必要な時もあるだろう。それらはとても大切だが、メンバーとの信頼関係を構築するほうがはるかに大事だ。信頼関係ができてしまえば、悩みや問題点は自然とメンバーから伝わってくるようになる。


 もしあなたがリーダーの立場なら、「メンバーが報告してくれないこと」という表層だけに目を向けるだけではなく、その行為の裏側にある「なぜ、報告をあげられないのか」という原因を考え、メンバーがホウレンソウしやすい環境作りを心掛けてみてほしい。必要なのはホウレンソウの強制ではなく、「何でも相談してくれていいよ」「一人で抱えるのではなく、みんなで解決しよう」とメンバーに伝えることだ。こうした行動によって、あなたのチームの雰囲気は格段に良くなり、情報共有も活性化していくのである。

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著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)

 竹内義晴

テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。


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