中古PCが売れている理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年08月02日 07時35分 公開
[松岡功,ITmedia]
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相性が良さそうなクラウドと中古PC

 中古PCが売れているのは、こうした幾つかの要因が挙げられるが、もう1つ中古品には大きな魅力がある。エコへの貢献だ。

 中古情報機器協会では販売台数実績と同時に、中古情報機器の活用による二酸化炭素(CO2)削減への貢献値を毎年算出している。それによると、新品を作る場合の石油使用量などを考慮すると、09年度のCO2排出量削減効果は23万8300トンに上るとしている。

 これは太さ30センチメートルの一般的な樹木が1年間に吸収するCO2の量として、153万6000本に相当するという。なお、この数値にはPCに加えて、サーバやディスプレイ、ビジネス用プリンタ・コピー機、デジタルカメラなども含まれている。

 こうしたことから、同協会では、中古情報機器の活用が使用済み情報機器の再利用や情報機器の長寿命化につながるだけでなく、廃棄物の発生抑制やCO2排出削減といった環境・循環型社会への貢献につながる、と提言している。

 同協会では、中古PCが最終的に企業向けにどれくらい販売されているかはつかみ切れていないというが、「企業向け需要は着実に高まっていると実感している。特に中小企業やSOHO向けには、販売店を通じて相当数が利用されているようだ」(小澤昇 専務理事・事務局長)ととらえている。

 中古PCの企業向け需要に対しては、昨年来、大手企業から使用済みPCを買い取り、データ処理したうえで必要なソフトウェアをセットで貸し出すレンタルサービスを展開している事業者も登場。つい先頃には、大手通信事業者が本格的に中古PCの取り扱いを始める動きも出てきている。

 こうした動きの背景には、特に中小企業向けをターゲットとして、ハードウェアもセットにしたクラウドサービスの展開を図ろうというもくろみがあるようだ。

 また、ここにきて教育機関がLinux OSベースの中古PCを大量導入しようという動きも出てきている。期待されているのは、クラウドコンピューティングでの端末利用のようだ。

 こうみていくと、クラウドと中古PCというのは相性が良さそうだ。中古PCにおける使用済み機器の調達から再生した機器の供給に至るサプライチェーンの仕組みがもっと整ってくれば、クラウドと組み合わせたサービスはさらに進化するような気がする。特に中小企業のIT化の底上げに効果を発揮するのではないか。果たしてビジネスにできるか、注目しておきたい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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