スマホアプリでゲームのルールを変えようビッグデータいろはの「い」(2/2 ページ)

» 2012年08月09日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 既に何度も指摘してきたとおり、こうした新しいシステムと基幹システムの連携は避けて通れない。salesforce.comのような外部のクラウドサービスとオンプレミスのシステムを混在させる場合にも遭遇した課題だ。2010年、IBMはEAI(エンタープライズアプリケーション統合)、特にアプリケーション間を迅速につなぐ数百のテンプレートを持つCast Iron Systems社を買収、その後、IBM Mobile Foundationにも統合している。

 Cast Ironを活用すれば、例えば、モバイルアプリケーションからSAPとsalesforce.comの顧客情報にアクセスしたり、SAPの出荷日遅延のアラートを即時にモバイル機器へ通知するなどの連携をほぼノンプログラミングで実現できるという。

企業にはより包括的なソリューションが望ましい

 もうひとつの大きな課題、セキュリティと端末管理も厄介だ。企業でのスマートフォン活用が進むにつれて関心が高まっているのがモバイルデバイス管理(MDM:Mobile Device Management)だが、あくまでもこれは「モバイル端末」の管理に過ぎない。

 下の図では、モバイル端末とアプリケーションの各レイヤで必要となるセキュリティと管理の機能がまとめられている。同じセキュリティでも端末紛失時にデータ消去を強制的に行うリモートワイプ機能とオフラインキャッシュの暗号化機能は補完関係にあり、企業ユーザーにとってはどちらも必須だ。アプリケーションの改ざん防止や自動更新など、MDMによる端末レイヤの管理だけではカバーできない機能もある。

 企業の情報システムであれば、より包括的なソリューションが望まれる。IBMには、サーバ、デスクトップPC、ノートブックPCといった、ネットワークに接続する各種端末のひとつとしてモバイル端末も位置づけ、包括的に管理を行うソリューションとしてTivoli Endpoint Managerがあり、その機能をIBM Mobile Foundationにも統合した。

 IBM Mobile Foundationは、その呼び名のとおり、「基盤」だ。今後、アナリティクスや業界に特化したソリューションもしっかりした基盤上に統合されてくるはずだ。ITの世界におけるプラットフォームの重要性は敢えて指摘する必要はないだろう。

 企業は、開発負荷やセキュリティへの懸念を理由に、次々と登場してくるであろう新しいモバイル端末を敬遠することはできない。むしろ、端末の新しい機能を活用したアプリケーションを迅速に投入し、ゲームのルールを変えていくための準備をすべきだ。技術の進化がもたらしたビッグデータはカオス(混沌)に違いないが、引き起こされる変化はすべての企業にとってビジネス機会となる。新たな技術で他社を出し抜けるからだ。

 ビッグデータ時代の到来によって、われわれは企業の既存の情報システムが著しく柔軟性を欠いていることを思い知らされた。繰り返しになるが、モバイルアクセスと、それに耐えられる安全性とスケールできるトランザクション処理能力、そして分析から得られたインサイトを即時アクションにつなげられる仕組み、という3つの視点から改めて考えてみるべきだろう。

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