企業システムのあり方を変えるビッグデータ活用の未来像富士通フォーラム 2013 Report(2/2 ページ)

» 2013年05月20日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ビッグデータ時代の情報システム

 ビッグデータ活用が広がることで情報システムのあり方も変化すると川妻氏はみる。伝統的な基幹業務システムは次第に無くなり、一部は「モダナイズ(近代化)」という形で、ビッグデータ時代に対応すべくスリム化されていく。

 一方、イノベーションを起こす新たなシステムが台頭する。同社ではイノベーションの領域を「ビジネスイノベーション」と「ソーシャルイノベーション」の2つの観点でとられ、モダナイズ、ビジネスイノベーション、ソーシャルイノベーションの3つが次世代の情報システムを構成するようになるという。

 そのイメージとして、例えば、製造業におけるビジネスイノベーションでは基幹システムがSOA化され、Hadoopを用いてバッチ処理を高速化する。さらに、データウェアハウスに蓄積された製造に関するあらゆるデータからキュレーションによって新たなアルゴリズムを作り、分析する。そこで得た知見を基幹システムに反映させ、同時にソーシャルメディアなどの外部データも分析し、その知見も反映する。この仕組みを回し続けることによって、製品の改善、あるいは、顧客への付加価値の高いサービスの提供といった活用につなげる。

 ソーシャルイノベーションは、ビジネスイノベーションのようなアプローチを社会の仕組みに適用するものであり、例えば、医療分野では電子カルテなどのデータから疾病を減らすための方法を導き出す、農業では流通や販売などのデータから得た知見を生産に反映させて、品質を高めていく。「人間の直感を上回る価値を生み出すのがビッグデータの世界」(川妻氏)という。

食・農クラウド「Akisai」の展示

 同社ではビッグデータ時代の新たなシステムを実現するために、ビッグデータの蓄積、分析、処理に必要な仕組みを開発、提供している。その活用領域においては、業種の垣根を越えた企業間連携などを通じて、実証実験をはじめとするさまざまな取り組みを進めている。

 川妻氏は、「人間の予測し得ないことが次々に起こる『不連続の時代』が到来し、これからはデータに基づいて判断していく『データ装備』社会への変革が求められるのではないか」と述べた。

富士通が示すデータの活用

 富士通フォーラム 2013の会場ではデータ活用を支えるさまざまな取り組みも紹介された。

 既に実現し、提供されているサービスの1つが「Webルートガイドサービス」だ。このサービスは、青森県の自治体が保有する「オープンデータ」(民間活用を目的とする公共のデータ)を観光に利用するもので、オープンデータを取り込んだ観光サイト上でユーザーが目的地(観光スポット)を選択すると、地図上に移動ルートを表示する。目的地を複数選択すれば、それに応じて最適な周遊ルートを提示してくれる。このサービスは同社のデータセンターから提供され、地元のレンタカー会社が利用者へのナビゲーションサービスにも採用しているとのことだ。

活用するビッグデータの1つとして注目される「オープンデータ」による観光クラウドサービス

 また、企業向けとなるデータキュレーションサービスにおいては、企業が保有する業務データ、あるいは、活用されていないデータを同社のキュレーターが分析、検証を行い、データの有効性や活用に関する評価やアドバイスを行っている。

 ブログやSNSなど企業の外部にいる顧客や消費者の“声”を対象とするソーシャルメディア分析サービスも提供している。同社では将来的にこうしたをサービス融合させ、企業の内外にあるデータを包括的に活用することで、経営課題の解決やビジネスへの貢献につながる仕組みを提供していくという。

 川妻氏の講演では企業が抱えるデータの外側に、ソーシャルメディアなどのさまざまなデータが集まる「Data Plaza」という構想が紹介された。企業内のデータではだけでは補えないデータをData Plazaに集め、それも組み合わせていけるようにする。これは、ティム・バナーズ・リー氏が提唱した「Linked Open Date」の概念にも基づいているという。データとデータがつながることよって実現する世界がビッグデータによって具現化されていくとのことだ。

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