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» 2013年06月11日 08時00分 公開

情シスの横顔:システム運用/保守だけの仕事に未来なし ファンケル・渡辺さん (2/2)

[伏見学,ITmedia]
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ユーザーとの信頼関係構築に近道はない

 このように数多くのプロジェクト経験を踏んだ渡辺さんが、プロジェクトを円滑に進めるために心掛けていることとは何だろうか。

 「北風より太陽になろう」――。日本におけるインターネットの第一人者であり、現在は慶應義塾大学環境情報学部長を務める村井純教授の言葉を渡辺さんは引用する。「こうしないと駄目、ああしないと駄目と言うよりも、こうすることで未来が開きますよという形に持っていかないと、メンバーの心が1つにならないし、皆が同じ方向に進みません」。

 例えば、次期顧客管理システムプロジェクトでは、店舗にタブレット端末を導入することになっていた。これまでにない新しいシステムであるため、現場から抵抗があることが想定された。そこで渡辺さんは、上流工程の要件定義の段階から店舗スタッフを集めて、タブレット活用の効果やメリットを何度も説明した。机上の説明だけでなく、ワークショップを行ったり、モックアップを使って現場でのデモンストレーションをしたりと、ユーザーと同じ目線に立ち、その都度お互いに共感しながらプロジェクトを進めていった。「ただし毎回同じやり方でうまくいくとは限りません。常に忍耐と工夫が必要なのです」と渡辺さんはプロジェクト成功の勘所を述べる。

 また、プロジェクトにおいては業務部門とのコミュニケーションも重要になってくる。これについては、どのような点に気を付けているか。渡辺さんは「信頼関係の構築が不可欠です」と強調する。普段から交流のない社員に対して、いきなり要件があるからヒアリングしたいと持ち掛けても相手は警戒するだろう。幸いなことに、情報システム部門には社内のさまざまな部署から問い合わせが来るので、その1つ1つにどれだけ誠実に対応するかが、業務部門との信頼関係において重要なのだという。

 「問い合わせにただ答えるのではなく、1のことを言われたら10返すようでないと、そう簡単に信頼関係は生まれません。我々情報システム部門は直接顧客と接しているわけではないので、業務部門の先に顧客がいるという意識を持って彼らをサポートしてあげることが、信頼感につながるのです。近道はありません」(渡辺さん)

システムの保守、運用だけでは存在意義がない

 今後のキャリアパスを踏まえ、渡辺さんにとってあるべき情報システム部門とはどのような姿なのか。「システムの保守、運用をやっているだけでは、企業の一部門として存在意義はありません」と渡辺さんは言い切る。今のポジションにあぐらをかくのではなく、危機感を持ち、いかに情報システム部門のプレゼンスを高めていくかを常に考えなければならないという。

 その点で、情報システム部門が主体となって企業の利益貢献を目指した次期顧客管理システムは、経営層からも高い評価を受けた、1つの成功モデルといえる。こうした取り組みを習慣化して、どう仕組化していくかが今後のチャレンジなのだという。

 「情報システム部だからシステムしかやりません、という風にはなりたくないです。ただシステムを作るのではなく、ビジネスに貢献する仕組みやきっかけを作っていく部署になるべきだと思います」(渡辺さん)

 そうした部門で活躍するためには、渡辺さん自身にも今後コンサルティング能力や、会計、法律など幅広い知識が必要になってくると見ている。「今や情報システムは企業のあらゆる部署が使っているので、裏を返せばどの部署からも相談が来るわけです。彼らと対話し、問題を解決するためにも、それぞれの領域における最低限の知識を持っておかないといけません」と渡辺さんは力を込めた。

「もはやITなくして企業活動はできません。ただそれだけでは情シス部門の存在意義はありません。企業活動に貢献できるITとは何かを日々考えていかないと、いつの日か“いらない”と言われてしまうでしょう。危機感を持ちながら常に仕事をしていかないと、ユーザー企業の情シス部門に未来はないです」 「もはやITなくして企業活動はできません。ただそれだけでは情シス部門の存在意義はありません。企業活動に貢献できるITとは何かを日々考えていかないと、いつの日か“いらない”と言われてしまうでしょう。危機感を持ちながら常に仕事をしていかないと、ユーザー企業の情シス部門に未来はないです」

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