「半年も待てない!」 分析データの提供を迅速化した沖縄国保連合会

各市町村の保険者からさまざまなデータ提供の要望が寄せられる中、既存システムでの運用に沖縄国保連合会は限界を感じていた……。

» 2013年06月18日 08時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

 国民健康保険にかかわる業務を行うべく、全国47都道府県に1団体ずつ設けられているのが国民健康保険団体連合会(国保連合会)だ。国保連合会とは、国民健康保険法第83条に基づき、会員である保険者(市町村および国民健康保険組合)が共同して国保事業の目的を達成するために設立された公法人のことで、診療報酬の審査や支払い、介護保険、障害者総合支援、特定健康診査および特定保健指導などを主な事業としている。

 その中の1つ、沖縄県那覇市にある沖縄県国保連合会では、県内に43ある保険者の多様なニーズに対応するために、このたび基幹となる業務システムの刷新を行った。

既存システムでは保険者のニーズに対応できず

 これまで沖縄県国保連合会では、医療機関からのレセプト(医療費の明細書)を審査し、各市町村の保険者に費用請求などをする際に、標準の電算処理システムを利用していた。しかしながら、保険者ごとに必要なデータが異なり、ニーズも日々変化しているため、既存の定型的なレポートでは支障をきたしていた。

沖縄県国保連合会 情報・介護課 情報管理係の稲嶺安洋係長 沖縄県国保連合会 情報・介護課 情報管理係の稲嶺安洋係長

 「保険者は、主に医療費分析か議会に提出する資料作成のためにさまざまな視点からのデータを求める。例えば、自分たちの市町村にいる患者がどこの医療機関で診療しているのかを把握したいなどのニーズだ。ただし、そうした要望に対して我々が提供するレポートは満足を得られるものではなくなっていた」と、沖縄県国保連合会 情報・介護課 情報管理係の稲嶺安洋係長は説明する。

 また、地域の保健師から健康教育や保健指導のために、健康診断結果をはじめとする病気を未然に防ぐためのデータを分析したいという要望があったが、既存システムだといわゆるビジネスインテリジェンス(BI)機能はなく、分析が難しい状況だった。

 もちろん、定型レポートにない新たなデータ抽出も可能ではあったものの、システム運用委託先の電算会社にカスタマイズして依頼しなければならず、追加コストに加えて時間もかかり、保険者にデータ提供するまでに半年以上も費やしていた。

Excelだからこその利点

 そこで既存システムを刷新すべく、沖縄県国保連合会が新たに構築したのが「国保連合会ポータルサイト」である。2012年2月ごろから構築をスタートし、同年7月からサービスインしている。新システムは、3台のサーバと、日本マイクロソフトのデータベース製品「Microsoft SQL Server 2008 R2 Enterprise Edition(EE)」、コラボレーション製品「Microsoft SharePoint Server 2010」で構成。データ加工ツールとして表計算ソフトウェア「Microsoft Excel」を活用した。

沖縄県国保連合会 情報・介護課 情報管理係の比嘉章氏 沖縄県国保連合会 情報・介護課 情報管理係の比嘉章氏

 マイクロソフト製品を採用した理由について、稲嶺氏は、Excelという使い慣れたアプリケーションが利用できること、Sharepointではブラウザ上でExcelファイルを閲覧できること、SQL ServerにはBIに必要な機能がオールインワンで整っていたこと、などを挙げた。

 「特にExcelに関しては、既に保険者も標準ツールとして利用していたため、新たな費用負担は不要だった。システム刷新に併せて、市町村ごとに新たなツールのライセンスを購入するのは現実的ではなかった」(稲嶺氏)

 新システムでは、5年分のレセプトデータ約4000万件の統計情報をCSV形式でダウンロードしてExcelで自由に加工できるほか、保険者から新たなデータの抽出依頼に対してもデータを格納したキューブからすぐに統計情報を取り出すことが可能になった。「ノンプログラミングでの帳票作成やデータ加工ができるようになり、レポートもビルダーで容易に作成できる。例えば、法改正などですぐに新たな統計データを議会に提出したいという保険者の要望に対し、場合によっては即日対応できるようになった」と、システム開発を担当した同課 情報管理係の比嘉章氏はメリットを述べる。

市町村同士でデータ共有が可能に

 国保連合会ポータルサイトの運用を始めてから1年が経とうとしている。具体的な成果は出ているのか。1つ目は、ある市町村で活用した帳票データなどをほかの市町村も共有できるようになった。今までは保険者ごとに個別で対応していたため、仮に同じデータでも共有することができず無駄が生じていた。「国保連合会ポータルサイトを通じてさまざまなデータを閲覧、利用できる。ユーザーである保険者にとっても、提供側である我々にとっても非常に効率化した」と稲嶺氏は力を込める。

 2つ目は、他の団体との連携である。ポータルサイトで疾病統計データを公開したところ、75歳以上の高齢者を対象とした医療制度を対象とした「沖縄県後期高齢者医療広域連合」から問い合わせがあり、国保と後期を組み合わせたデータが見たいという要望が出てきたという。稲嶺氏は「制度が異なるため、本来であればそれぞれのデータしか分析できなかった。柔軟なデータ活用により、こうした団体のカベを超えた横連携が可能になったのだ」と意気込んだ。

※製品名に一部誤りがありました。「SQL Server 2008 R2 Express Edition」→「SQL Server 2008 R2 Enterprise Edition」。お詫びして訂正致します。(2013/6/21 11:00)

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