スマホでマイナンバーの収集が容易に? NTTデータが実証実験を公開

金融機関や企業には10月から国民へ通知される「マイナンバー」を収集する必要が生じるものの、大量の情報を安全で正確かつ効率的に収集する方法に課題を抱える。情報の電子化で解決を図るとするNTTデータが、グループ社員を対象にした実証実験の様子を公開した。

» 2015年03月10日 20時34分 公開
[國谷武史ITmedia]

 NTTデータは3月10日、グループ社員を対象に実施している「マイナンバー」番号収集サービスの実証実験の様子を報道機関に公開した。スマートフォンやアプリを利用して機密性の高い番号情報の安全性を確保しながら、効率的に収集することを目指すとしている。

 2016年1月から運用が始まる「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)」に先駆け、2015年10月から住民票を有する国民に「マイナンバー」が通知される。税や社会保障に関連する業務を担う金融機関や団体、一般企業ではマイナンバーを収集して業務に利用することになるが、大量のマイナンバー情報の安全性を確保しながら、正確かつ効率的に収集しなくてはならず、その方法に課題を抱えているという。

 第一金融事業本部 金融グローバルITサービス事業部の前田哲也氏によると、マイナンバーを扱う業務に際して、一般企業では従業員や家族などからマイナンバーを収集しなければならない。さらに各企業で収集されたマイナンバー情報を金融機関も収集する。NTTデータ経営研究所の試算では金融機関が収集すべきマイナンバー情報は少なくとも約7000万件に上り、3年をかけて収集する場合でも1日あたり約9万5000件の処理が必要になる。

 一般企業でも2016年の年末調整などの業務からマイナンバーを扱うことになるため、遅くとも2016年秋頃までに対象となる従業員や家族からのマイナンバーの収集と本人確認などを終えておく必要があるという。

 ただ、現時点でもマイナンバー制度が国民に周知されているとは言い難い状況であり、マイナンバーを収集する側の一般企業や金融機関ではできるだけコストをかけたくないという思惑がある。一方でマイナンバーは「特定個人情報」に分類されることから、情報漏えいや不正利用などの問題が起きないよう厳格な保管や管理、利用の徹底が求められる。

NTTデータが予定するサービスの全体像

 制度開始に合わせてNTTデータは、金融機関や企業顧客向けに、共同利用型のビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)サービスとして「マイナンバー番号収集サービス」の提供を予定。同サービスでは郵送と電子による2つの申告ルートを用意する。電子ルートは、スマートフォンやタブレット端末のアプリでマイナンバーの収集、本人確認、真正性確認などの処理を行い、安全性と収集効率の両立を図るという。

 実証実験では試作したスマートフォンのアプリとカメラで、まずマイナンバー通知カードに見立てた健康保険証にある社員番号(仮想マイナンバー)を読み取り、さらに本人確認のために運転免許証をアプリのOCR機能も読み取る。仮想マイナンバーと運転免許証の情報を突合して、認証が成功できるかどうかや、アプリの使い勝手、処理時間や読み取り率などを調べる。

読み取り処理に改善の余地があるとした社員の声が多かった

 実験当日は自主応募した約160人のグループ社員が参加。試作アプリを自身のスマートフォンにインストールして、健康保険証と運転免許証の情報の読み取りやすさなどを体験した。会場の照明の影響からか、スマートフォンでの読み取り操作を繰り返す社員が多かったものの、読み取り後の突合や認証の処理はスムーズに進んでいた。

 参加した社員からは、「撮影が難しかったものの、その後は簡単に操作できた。現在は免許証のコピーを書類に添付して送付しなければならないようなことがあるが、そうした手間がなくなると期待している」「読み取りに手間がかかる。情報を手入力でもできるようにするなど、ユーザーインタフェースをさらなる改善が必要だ」といった声が聞かれた。

突合や認証の処理はスムーズで、失敗するケースはほとんどなかった

 NTTデータでは今回の検証結果を「マイナンバー番号収集サービス」の開発に反映させ、「利便性と安全性、効率性と経済性を担保できるサービスを早期に実現したい」と話している。

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