IBMがBluemix上でAPIエコノミーを広げていこうとしているのは、Bluemixをクラウドサービス最大の「SaaSの組み立て工場」に仕立て上げ、PaaSおよびSaaS市場で最大勢力を獲得しようという狙いがある。
ただ、APIエコノミーを広げていくためには、IBMが孤軍奮闘するだけでなく、まさしくエコシステムの拡大が欠かせない。同社では昨年(2014年)来、Bluemixの展開とともにビジネスパートナーとの協業を積極的に進めてきた。さらに今回、新たに「BMXUG(ビーザグ)」と呼ぶBluemixユーザーグループも発足したという。
企業向け事業におけるユーザーグループというと、メンバーはユーザー企業のケースがほとんどだが、小池氏によるとこのコミュニティのメンバーはAPIエコノミーを活用するユーザーである「技術者」が対象だという。「APIエコノミーを活用して先取りして新しいことに挑戦したいという技術者に、このコミュニティを大いに生かしてほしい」という同氏は、こうした取り組みも重要なエコシステムづくりと考えているようだ。
ただ、今回の話を聞いて筆者がふと気になったのは、IBM以外のクラウドベンダー各社が同様に、APIエコノミーをそれぞれに主張するようになれば、ユーザー企業からすると乱立するAPIエコノミーにとまどうことになるのではないかという点だ。理想的なのは、APIエコノミーが個別ベンダーの枠を越えて、幅広いクラウドサービスに適用できるようになることだ。そこでこの疑問を小池氏にぶつけてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「BluemixのAPIエコノミーは、Cloud Foundryをベースにしているクラウドサービスであれば広く適用できる可能性がある。一方で、独自構造のPaaSによるAPIエコノミーは、あくまでもそのPaaSの範囲でしか利用できない。そう考えると、APIエコノミーはオープンなプラットフォームだからこそ、ユーザーから見ても大きな効果を得られると確信している」
確かに、オープン環境でのAPIエコノミーの価値は大いにありそうだ。しかし、結局は従来のOSやデータベースにおけるプラットフォーム競争と同じくオープンと独自構造の対立が、クラウドの世界でも続く可能性が高いのではないか。ここはひとつ、クラウドならではのAPIエコノミーの幅広い適用を実現できるような知恵を業界全体で絞り出したいところである。
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