サービススタートの前日、3月25日に行われたセレモニーでソフトバンクの山口氏は、この「瀬戸内カレン」事業の成否を判断するポイントとして「この事業で利益が出るかどうか」という点を挙げた。
瀬戸内カレンで運用するEV-neoは全部で13台。EV-neoが既に生産中止となっていることや島内で完結させるビジネスモデルのため、事業規模としては大きく広がるものではない。故障用の予備車などを考えると売り上げは「年間で600万から1000万円程度」と山口氏は見込んでいる。
しかし、瀬戸内カレンで目指すのは事業規模や利益よりも“ビジネスとして成立する”という成功例だ。「豊島は観光資源やモビリティに対するニーズなど、国内でも珍しいほど事業が成功する条件がそろった場所。ここで勝ちパターンを作れるか、そして新たな引き合いにつなげられるかどうかが、今後の事業展開の試金石となる」と山口氏は話す。体力を使わずに気軽に移動できるローカルな乗り物として、国内外の観光地におけるニーズは十分にあるはずだ。
人間が移動するという、極めてアナログな行動をITでどうサポートできるか――。ソフトバンクは今回のモビリティ向けIoT事業を「Internet of Moving Things」と銘打っている。山口氏は「パーソナルモビリティの普及や自動運転など、モビリティに関する技術は急速に進化している。このInternet of Moving Things事業は、今後2〜3年で1つの山場を迎えるのではないか。その頃にはモビリティのあるべき姿も変わっているだろう」と推測する。
IoTによって“人”と“移動”という行動との関係性が変わっていく――。これこそがモビリティの再発明にほかならない。そうなれば、瀬戸内カレンのような観光事業や運輸、小売などさまざまなビジネスに大きな影響を与えるはずだ。そんな時代はもう、すぐそこまで来ているのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.