イオン銀行でPepperが働く実証実験スタート 2年後には“無人店舗”も実現?

イオンカードの入会、窓口の接客担当者は「Pepper」――イオン銀行がそんな実証実験を開始する。将来的には無人店舗の導入も検討しているが、既存の業務や雇用をなくすものではないそうだ。

» 2017年06月13日 09時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 人型ロボット「Pepper」がイオン銀行で働き始める。その業務はクレジットカード「イオンカード」の入会受付窓口での接客。カードの機能や特典、入会の際に迷いやすいポイントを説明してくれるという。

 イオン銀行は、6月13日にイオンモール幕張新都心店でロボット活用の実証実験を始める。Pepperを使ったカード入会受付のほか、AI搭載型の対話型ロボット“デジタルコンシェルジュ”による商品案内といったサービスを展開する。受付業務をデジタル化することで、スタッフの負担軽減や待ち時間の削減、ミス防止を狙う。

photo 6月12日に行われた説明会では、実証実験のデモが行われた

 カード入会受付は、専用のタブレットで申し込みを進めるユーザーをPepperが支援する。発話や胸部ディスプレイの表示で、画面の説明や入力のフォローを行う。最大3人まで対応でき、入会手続きの完了までを支援する。

 デジタルコンシェルジュは、タケロボのコミュニケーションロボット「ロボコット」を活用したタブレット用のFAQアプリだ。Webや店頭でよく聞かれる約800種類の質問を登録しており、自然言語によるコミュニケーションが行える。会話履歴はクラウド上に保存し、登録する質問を今後増やしていくという。

photophoto カード入会受付は、専用のタブレットで申し込みを進める(写真=左)。タケロボのコミュニケーションロボット「ロボコット」を活用したデジタルコンシェルジュ(写真=右)

企画から実装まで約半年

photo イオンフィナンシャルサービス ストアシステムリサーチ部 部長 香下大樹さん

 実証実験の企画からシステム実装までの期間は約半年。苦労したのは、システムそのものというよりも、Pepperの説明内容や筺体の形など、ユーザーインタフェース(ユーザーエクスペリエンス)の部分だ。

 「入力のミスをPepperが教える際、全てのミスを指摘されたらユーザーは嫌気が差しますよね。どの状態でアクションさせるか、という点の調整は難しかったですね。デジタルコンシェルジュについても、ロボコットはもともとぬいぐるみのような風貌が特徴のマスコット型ロボットです。しかし、それでは銀行内の雰囲気に合わない。裸のタブレットにし、音声を聞き取りやすいようにマイクを外付けにしています」(イオンフィナンシャルサービス ストアシステムリサーチ部 部長 香下大樹さん)

 2017年7月24日まで実験期間を行い、結果を検証した上で設置店舗を拡大する予定だ。2017年秋にはセルフ入力端末の実用化を目指している。「早ければ2019年度に、さまざまなロボットを組み合わせた無人店舗の展開を検討している」(香下さん)が、これは既存の業務や雇用を奪うものではないという。

有人では採算が厳しい地域への出店に

photo Pepperが地方のインフラ強化に貢献するかもしれない

 現在、イオン銀行はショッピングモールを中心に全国で136店舗を展開しているが、イオンのグループ会社であるダイエーやマックスバリュ、各ドラッグストアからも出店要請を受けている。しかし、投資対効果の面で断念してきた地域も多いそうだ。

 「特に地方はコスト上厳しいケースが多いです。しかし無人で運用できるならば、営業時間外でも対応しやすいし、採算面では有利でしょう。今回の実験ではカード発行が主ですが、将来的には投資相談やローンといった受付も行えるようになる可能性は高いです」(香下さん)

 投資やローンなど、高度や高額な商品になれば、取り扱う情報もセンシティブなものになる。本格的な運用に至るまでには、セキュリティなど課題はまだ多いが、発表会で行われていたデモや体験会では、スムーズに登録を進められた印象だ。実用化されれば、地方のインフラ強化に一役買ってくれるのは、間違いないだろう。

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