120%の顧客満足度を得るためには、顧客自身が気付いていない真の問題を見つけ出すことが必要です。そのため、“問題発見力を高める”ことが重要だったわけです。そして、問題発見力を構成しているスキルの1つである“柔軟な発想力”が、普通の発想と比較して、実際の事例では、どのような差を生むのか。その例を見てみましょう。
この写真は私の使っている携帯電話です。
ご覧のとおり、最近の携帯電話にはデジタルカメラ機能が付いているのが当たり前のようになってきています。ある通信事業者が、他社との差別化のために携帯電話にカメラ機能を付加したことがきっかけです。その後、他社も追随して一気にスタンダード化したのはご存じのとおりです。この“カメラ機能”も付いていて当たり前となったいま、カメラ機能をどのように差別化してゆくかという観点から“通常の発想”と“柔軟な発想”で比較してみましょう(実際にはカメラ機能の強化は少し前のことのようで、最近は音楽プレーヤや少額決済機能などの多機能化が差別化要因となっているようです)。
このカメラ付き携帯電話は、一般的には携帯電話にカメラも付いていると、とらえられるでしょう。イメージとしてはこんな感じですね。
そこで他社との差別化競争のために、おまけ程度であったカメラ機能を強化します。とすると強化策は次のようなことになります。
デジタルカメラといえば画素数ということで、最近は携帯電話のカメラにもかかわらず、よりきれいに写すために200万画素を超える機種が多くあります。
柔軟な発想では、カメラ機能を次のようにとらえます。
携帯電話にカメラが付くのではなく、アルバム付き携帯電話です。携帯電話はいつでも持ち歩いていて、かつデータを保存しておける。さらに液晶ディスプレイによるビューア機能があることに着目したものです。皆さんも携帯電話に格納した子供や奥さんの写真を見せ合う光景を目にしたことがありませんか。とすると、考えられる機能強化は次のようなものになるかもしれません。
携帯電話のカメラを、カメラ機能よりアルバム機能としてとらえています。撮った写真を見るのは(見せる)携帯電話の液晶ディスプレイとなるので、プリンタで印刷するほどの画素数は必要がないことになります。もちろん大きく引き伸ばしてプリントした際に差が出るような高性能レンズの必要もないでしょう。
このように同じカメラ機能付き携帯電話の機能強化を考える場合でも、発想方法の違いでその対策が違ってきます。
次回は“柔軟な発想力”の後半として、柔軟な発想のもう1つの事例「そんなむちゃな……ある社長の難題の場合」を紹介します。そして柔軟な発想力を身に付けるためのトレーニング方法について解説します。
次回までの間、皆さんも身の周りにある商品やサービスまたは出来事など、いつもよりもう一歩踏み込んで興味を持ち、「これはどのような発想の結果、こうなったのか」とか「私ならこう発想し、こんなふうにするのにな」と考えてみてください。きっと新たな発見があるのではないかと思います。
▼著者名 秋池 治(あきいけ おさむ)
株式会社リアルナレッジ 代表取締役
横浜国立大学卒。メーカー系情報システム会社にてシステム企画とシステム開発に従事。その後、ユーザー系企業でデジタルビジネスの企画および社内改革に取り組む。2003年に数名の仲間と共に株式会社リアルナレッジを設立、業務プロセスの可視化やプロセスの最適化により、経験や勘に依存せず業務を遂行するためのパフォーマンスサポートを提供している。
著書に「情報エキスパート」(アプライドナレッジ刊)がある。
e-mail:akiike@realknowledge.co.jp
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