2011年7月の停波が決定している地上アナログテレビ放送(以下、地アナ)は、今年5月に公開された総務省の浸透度調査(PDF)によれば、停波するという事態については93.9%が、停波時期についても60.4%が認知しているという。3年前に公開された平成16年版の「情報通信白書」では、認知度が約50%にとどまっていた事実(関連記事)からすると、大幅な改善と見ていいだろう。
しかし、前述の浸透度調査によれば、地アナに取ってかわる地上デジタルテレビ放送(以下、地デジ)の世帯普及率はこれらの数字を大きく下回る27.8%。報告書では、この値はクリティカルマス(※)の水準に達していることから、今後急速な普及が見込まれる……という観測で締めくくられているが、どうにも楽観的すぎる気がしてならない。
※:商品およびサービスの普及・維持に最小限必要とされる市場普及率。この値を超えると普及率は急速に伸びるとされる。一般的に、人口の17%がクリティカルマスと考えられている。
なぜなら、浸透度調査ではテレビ/チューナーという地デジの受信に必要なインフラの1つしか考慮されていないからだ。地デジの視聴には、中継局というもう1つのインフラも必要となる。
デジタル放送推進協会(旧 地上デジタル放送推進協会)のサイトには、2006年12月時点で視聴可能エリアが84.0%まで拡大したという数値が掲げられているが、この数値を100%に近づけるには相当のコストが必要なはず。あと4年という残り時間もそうだだが、放送事業者の設備投資負担も厳しいものがある。
政府はこの問題に対して、全国の国道・河川沿いに設置した光ファイバー網を民間放送局に開放する方針であると報じられた(8月7日の北海道新聞で報道)。実際に行われれば、民放各局は中継施設と光ファイバー網を接続、集落ごとに設置される小型送信機を経由して放送することが可能になる。これで中継局の設置コストが、一気に引き下げられる算段だ。
もっとも、これだけ地アナが浸透した現在、いわゆる“地デジ難民”の出現は避けられそうもない。光ファイバー網の活用だけでなく、安価なチューナーの供与/貸与などといった合わせ技で臨まなければ、2011年7月には目標大幅未達という“恐怖の大魔王”の降臨は必定かもしれない。
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