音の印象は、ひとことで表現すると「ヤマハらしいサウンド」。当たりが柔らかく、CDもDTS-HDマスターオーディオ収録のライブビデオともにナチュラルテイストなサウンドで心地よく聴かせてくれる。
厳密に言うとリアルでも自然でもないのだが、耳当たりの良い音は、そっと寄り添うような印象で、長時間聴き続けていてもまったく飽きないし、聴き疲れもしない。しかしDTS-HDマスターオーディオ収録の「ダイハード4.0」をかけ始めると少々イメージが変わった。
成熟したオトナの余裕のような、どこまでも破綻しないそつなくまとまった良好なサウンドバランスを維持しながらも、幅広い強弱をもつダイナミックな効果音を楽しませてくれるのだ。音楽も映画も、それぞれのソースに似合った音をうまく演じ分けてくれるので、幅広い活用にも柔軟に対応してくれるだろう。
自動音場調整の結果はかなり良好だった。音色に関しては大きな変化は見られず、それでいてスピーカー間のつながりに関しては格段に向上。揺るぎないシームレスなサラウンド空間が至極簡単に実現されたため、そのあとの微調整もほとんど必要なかった。かなりインテリジェントなシステムと呼んでいいだろう。
さて、本製品におけるセールスポイントのひとつ、シネマDSP“3Dモード”の効果はいかがなものか。前後左右に加え、天井や床も音場空間になるさまは未知の世界の音。この包まれ感、臨場感には大いに魅力を感じた。しかもヤマハ本来の柔らかい音による効能もあって、多元的な音場空間であるのにもかかわらずうっとおしさは感じない。さすがヤマハというべきか、完成度の高いサラウンドシステムといえる。オーナーになったら結構な頻度で活用しそうな機能だ。
もうひとつのセールスポイント、ピュアダイレクトモードの効果はというと、こちらもかなりの好印象。明らかに音の鮮度感が増し、それまで比較的良好だった解像度がさらに向上する。「イノセンス」のリニアPCMでは、銃声のひとつひとつまで細かく聴き分けることができるようになった。シネマDSPの包まれ感も魅力だが、個人的にはこちらの方が好み。CDなどのステレオ音源だけでなく、映画などのHDオーディオでもこちらを基本とすべきだろう。
このテイストを真っ先に気に入ってくれそうなのは、やはりヤマハ製スピーカーやパワーアンプのオーナーだろう。柔らかでクセのない、特に生楽器の演奏を心地よく聴かせるヤマハならではのサウンドキャラクターは、このDSP-AX3800にも色濃く受け継がれている。ステレオパワーアンプと比較してもそれほど違和感はないはずだ。
また「いま持っているステレオシステムをいかしつつホームシアターとピュアオーディオを両立させたい」「できればiPodやWebラジオなども聴けるようにしたい」という欲張りなシステムを望む人にもこの機種は本命となりうる。AVアンプとしてでなく、ピュアオーディオ用パワーアンプ、様々なソースに対応するマルチメディアセンターとしても活用できる多機能機と断言しよう。
注目ハードウェアチェック | -- |
---|---|
HDMI入力 | 4 |
HDMI出力 | 1 |
アナログ音声入力 | 10 |
PHONO端子 | ○(MM) |
iPod端子 | ○ |
別売iPodドック | ○(リモコン付) |
USB端子 | ○ |
iLINK端子 | ○ |
LAN端子 | ○ |
自動音場調整機能 | ○(モノラル) |
パワーアンプ | 定格140ワット×7 |
サイズ | 435(幅)×171(高さ)×438.5(奥行き)ミリ |
重量 | 18.4キロ |
今回のチェックに使用した機材は以下の通り。視聴した環境や各機材の詳細については、こちらを参照頂きたい。スピーカーはエラックの200ラインシリーズと240ラインシリーズを組み合わせ、プレーヤーにはパイオニアの「BDP-LX80」とソニーの「プレイステーション3」を利用している。
機材種別 | メーカー | 型番 |
---|---|---|
フロントスピーカー | エラック | FS207A |
センタースピーカー | CC201.2 | |
リアサラウンドスピーカー | BS203.2 | |
サラウンドバックスピーカー | BS203.2 | |
サブウーファー | SUB2060ESP | |
プレーヤー | パイオニア | BDP-LX80 |
ソニー・コンピュータエンタテインメント | プレイステーション3(HDD 20Gバイトモデル) | |
スピーカーケーブル | オーディオテクニカ | AT-SS2300 |
HDMIケーブル | AT-EDH1000 | |
デジタル同軸ケーブル | AT-SD2000 | |
デジタル光ケーブル | AT-SDP2000 | |
アナログケーブル | AT-SA2000 | |
電源タップ | AT-PT707 | |
プロジェクター | 三洋電機 | LP-Z4(旧モデル) |
スクリーン | キクチ科学研究所 | キクチホワイトマッドアドバンス(100インチ 16:9ワイド) |
視聴ディスク | メディア・フォーマット |
---|---|
ダイ・ハード4.0 | BD・DTS HDマスターオーディオ5.1ch |
300 | BD・リニアPCM5.1ch/ドルビーTrueHD5.1ch/ドルビーデジタル5.1ch |
イノセンス | BD・リニアPCM7.1ch/DTS-ES6.1ch |
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド | BD・リニアPCM5.1ch/ドルビーデジタル5.1ch |
アンジェラ・アキ「MY KEYS 2006 in 武道館」 | BD・リニアPCM2ch |
Omar Hakim「Listen Up」(ステレオサウンド「2007 dts-HD Master Audio Presentation Disc」より) | BD・DTS HD Master Audio 7.1ch |
Pat Metheny「Overture」(ステレオサウンド「2007 dts-HD Master Audio Presentation Disc」より) | BD・DTS HD Master Audio 7.1ch |
Diana Krall「THE VERY BEST OF DIANA KRALL」 | CD |
小曽根真「フォーリング・イン・ラブ、アゲイン」 | CD |
Yo-Yo Ma 「Plays the Music of John Williams」 | SACD |
Norah Jones「COME AWAY WITH ME」 | SACD・5.1ch |
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