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薄型テレビ、夏モデルに見る3つのトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/6 ページ)

» 2009年05月27日 10時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

進化する自動画質調整

麻倉氏: 三菱電機が「家庭画質」、東芝が「おまかせ映像」、日立製作所が「インテリジェントオート」の名称で実装した、自動画質調整も注目すべき点です。内容はいずれも、いわゆる自動画質調整なのですが、その内容はそれぞれ異なります。

 映像設定について、各社では以前から「映画」や「あざやか」などさまざまなモードを用意していましたが、ユーザーにはあまり使われていませんでした。そこで、一考した結果、生み出さされたのが自動画質調整機能です。外環境と映像(信号)内容を照らし合わせて、テレビが自動的に画質を調整するというのが基本的な内容になります。

 三菱電機はいわゆるポケモン現象への対策として、設定した年齢に応じて輝度やダイナミックレンジを調整し、映像の刺激を抑えるというのが発想の根底にあります。東芝は画質のためのイコライズがその根底にあり、映像内容はもちろんのこと、設置場所の明るさに応じて画質を調整します。日立製作所も映像内容と設置環境から自動的に調整を行いますが、色と輝度のセンサーを搭載しています。

 自動画質調整を投入したメーカーとして代表的な3社を挙げましたが、ソニーもEPGのジャンル情報を画質設定へ反映させていますし、シャープも「アクティブ」という設定では入力された信号を解析してシャープネスや輝度を調整する機能を持った製品を投入しています。類似した機能を製品実装していない主要メーカーはパナソニックぐらいです。

 ですが、先に挙げた3社の機能も完ぺきではありません。三菱電機には画質という観点が欠落していますし、東芝は色温度センサー非搭載、日立製作所は映像内容をEPGから取得していますが、映像のリアルタイム分析は無し――など、それぞれにおいて自動調整機能はまだ完璧とはいえません。これから各社ともにトライを進めていくことになるでしょう。

 エコ関連機能についても言及しましょう。各社とも待機電力を落とす、こまめにバックライトを切るなどの機能を備えています。各社ともにそうした機能が画質へ影響を及ぼすことはないと言いますが、何らかの影響は避けられないでしょう。ただ消費電力を落とすのではなく、ソニーが一部製品で人感センサーを搭載したよう、消費電力を下げるため、あるいは、下げた結果どのようなことが可能になるかを積極的に追求していくべきだと考えます。

 エコ機能――省電力機能を単なる節約に終わらせないためにも、ホンダがハイブリッドカー「インサイト」で“エコ度”を採点してコーチングしてくれる「ティーチング機能」を搭載したよう、利用者にとって面白みのある、興味を引く要素をいれることも大切だと思います。

画質の変化

――画質についてはどのような変化・進化が見られるのでしょう。

麻倉氏: これまでソニーとシャープしか搭載していなかった、LEDバックライトを東芝も搭載してきました。画質については後に述べますが、施策で興味深いのが、夏商戦向けに高画質・高機能のハイエンドモデル「Z」を展開してきたことでしょう。

 これまでは春に普及モデル、秋に高画質・高機能モデルという展開をしていましたが、画質を前面に押し出す施策が成功を収めたことにより、「通年高画質」の作戦に出たのですね。同社が秋にも高画質・高機能モデルの新製品を投入するならば、それは年に2回、画質革新が行われることを意味しますので、他社への大きなリードとなるでしょう。秋には「CELL TV」も控えていますしね。

 各社のLEDバックライト搭載機の映像を見ていると、それぞれのスタンスの違いが現れて面白いです。シャープは「従来と違う色」を強調していますし、ソニーはCCFLで培った絵作りの延長にありながら、それを高度化し突き詰めるという方向性です。

photophotophoto 左から東芝「ZH8000」、ソニー「XR1シリーズ」、シャープ「XS1シリーズ」。いずれもLEDバックライトを搭載するが絵作りの方向性は異なる

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