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プラズマと液晶、どちらが3Dに向いている?本田雅一のTV Style

» 2010年01月18日 01時42分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 「2010 International CES」でフィーチャーされていたというわけではないが、プラズマと液晶という方式の違いによる3D品質の差はどのぐらいあるのだろうか。先週取り上げた有機ELパネルを用いた3Dの展示はとても素晴らしいものだったが、同じような差はプラズマと液晶の間にもあると考えられる。

photo パナソニックが発表した3D対応のVIERA

 CESの表の展示だけを見ると、パナソニックのプラズマを用いた3Dテレビの方が少しばかり有利という印象だったが、実は別の場所で、さらに追い込んだ素晴らしい3D映像を見たことがある。製品版でどこまで追い込んでくるか期待されるところだが、プラズマに対して3D品位に対する大きな期待を持っているのは、3Dに向いた特徴をプラズマが持っているからだ。

 現在の家庭向け3Dディスプレイは、左右の目に見せたい映像を交互に表示し、メガネに設けられた左右独立のシャッター(液晶層でできている)を駆動することで立体視を実現している。こう書くと3Dといっても、とても簡単な仕組みだということが分かると思う。原理は本当に簡単だ。しかしそれを各ディスプレイで実現しようとすると、方式ごとの制限が3D化を難しくする。

 例えば液晶の場合、走査線の上から順に画素を順次書き替えていき、通常1/60秒で書き替えを完了する。ステレオ映像なら1/120秒で書き替える倍速駆動でOKと思いがちだが、実はこれではステレオ化できない。なぜなら倍速駆動では、常に画面上の画素が書き替えられているため、左右の映像が混じった状態になっているからだ。

 3D液晶テレビが240Hz駆動になっているのは、いったん1/240秒でパネル上の映像を書き替えたあと、次の1/240秒は映像を保持し続けるためだ。この保持している期間に、見せたい方の目にあるメガネレンズのシャッターを開ける。実際には垂直帰線期間も考慮する必要はあるが、おおむね上記の考え方でいい。

 しかし、実際に上記のシーケンスで動かしてみると、液晶そのものの動作遅れがあるため、若干のクロストークが残ってしまう。動作遅れを考慮してシャッターを開けておく時間を1/240秒より短くするとクロストークは減るが、今度はシャッターを開く時間が短くなるためフリッカーが目立ち始める。

 このバランスをどう取っていくかが、液晶テレビの場合、実に難しいのだ。それでもサムスンなどは比較的うまく処理していたが、どのように問題解決を図ろうとしているのかは分からない。クロストークが出ることを見越して、クロストークを打ち消す補正をかけることもできなくはないが、階調ごとに応答速度が変化するVA型液晶ではそれも難しいだろう(IPSならば有効に動作するかもしれない)。

photophoto サムスン(左)とシャープ(右)の3D対応液晶テレビ試作機。シャープはBlu-ray Discドライブ内蔵機を参考出展していた

 と、話はややそれたが、プラズマが3D向きだといわれる理由は、上記のような液晶が抱える問題がプラズマにはないからだ。パナソニックのものは120Hz駆動で3Dを実現しているが、これは液晶の240Hzより劣っていることを意味しているわけではない。むしろ3D向きだからこそ120Hz駆動でも3Dになるのだ。

 プラズマは各画素に対して全サブフィールド分の発光パターンを順次書き込んでいき、全画素の情報がそろった段階でパパパッ!と全画素が同時にプラズマ放電を行う。発光している期間は、映像フレーム期間のおよそ1/4程度でしかない。

 この期間の間に発光した光を、きちんと目に届けてやれば、画素書き替えのために走査する時間を考慮する必要なく、余裕を持ってメガネの左右を切り替えることが出来る。実際には蛍光体の残光特性を考慮する必要があるため、言葉で書くほどに簡単にはいかないが、左右の目に届ける映像を順次表示して3D化するフレームシーケンシャルタイプの3Dディスプレイはプラズマの方が、原理的にずっと簡単といえるだろう。

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