ソニーが、従来より大型の有機ELパネル生産を開始した。同社は2月16日、放送業務用マスターモニターの新製品として、25V型有機ELパネルを搭載した「BVM-E250」、および17型の「BVM-E170」を発表した。5月から順次発売する。
ソニーは、2007年12月に世界初の有機ELテレビ「XEL-1」を発売。自発光の有機ELならではの黒再現や応答速度の早さなど、画質面では高い評価を得たものの、昨年2月に後継機種を出さないまま販売を終了した。有機ELディスプレイとしては現在、7.4型のマスターモニター「PVM-740」を販売している。
有機ELパネルの大型化は、TFT基板に有機材料を蒸着する方法(パターニング)など、主に成膜工程の製造プロセスに課題を抱えていた(→関連記事)。有機ELパネルの製造(成膜工程)は愛知県知多郡にあるソニーモバイルディスプレイ、組み立て(セット製造)は愛知県稲沢市にあるソニーイーエムシーエス東海テック稲沢サイトで行っているが、このうちソニーモバイルディスプレイは2008年2月に220億円の設備投資を実施。TFT工程からEL成膜工程の生産設備を増強している。「2008年の始めに製造プロセスと製造装置を改善したことで、17V型と25V型の量産が可能になった。現在は最大で30V型まで対応できる」という。
今後の製品展開については、「同じような高画質が求められるさまざまな用途に有機ELディスプレイデバイスを順次投入する」(ソニー、プロフェッショナル・ソリューション事業本部、ビジュアルプレゼンテーション・ソリューション事業部モニター部の大島順一統括部長)としており、具体的な用途としてグラフィックや医療分野(内視鏡など)を挙げた。一方、テレビへの採用については、「ソニー全体として中大型化技術やアプリケーションの検討は進めているが、テレビ用途に関するコメントは控えたい」(広報)と慎重な姿勢を見せた。
ソニー製プロフェッショナルモニターの代名詞“BVM”型番を与えられた「BVM-E250」と「BVM-E170」は、どちらも1920×1080ピクセルのフルハイビジョン解像度を実現。TFT基板の上側から効率良く光を取り出せるトップエミッション方式に、マイクロキャビティ構造(微小な光共振器構造)とカラーフィルタを組み合わせて色再現性を向上させる独自技術「スーパートップエミッション」は基本的にXEL-1の技術を踏襲している。コントラスト比も100万:1と同じだ。
一方、映像制作におけるリファレンスを目指し、マスターモニター向けに「業務用ディスプレイエンジン」を新規開発。高精度のI/P変換をはじめ、ユニフォミティー(画面全体の色表現の均質化)、カラーマネジメントの精度向上を図った。色域は、ITU-R BT.709、EBU、SMPTE-Cといった放送規格に加え、デジタルシネマもサポートする。
「倍速液晶パネル搭載のマスターモニター、BVM-L230について放送関係者にヒアリングを行ったところ、夜景シーンの黒浮きやテロップのぼけ(動画ボケ)が課題と分かった。また7.4型有機ELのPVM-740では、正確な黒を表現できる一方、正確なあまり黒が沈んで見えてしまうことが指摘されている」(同社)。
BVM-Eシリーズは、“自発光ならでは”の黒再現や応答速度の速さで黒浮きや動画ボケを改善。さらにブラウン管モニターの少し黒が浮く特性(ガンマ値)を再現する機能も盛り込まれている。「信号遅延時間もCRT並みに改善したことで、ブラウン管モニターと並べて使用できる」(同社)。また、3D表示はサポートしていないが、3D信号を管理する機能(L/Rスイッチ、チェッカーボードなど)は備えた。入力端子は3系統のSDI、DisplayPort、HDMI。専用の拡張ボードを使ってRGBやコンポーネント、デュアルリンクHD-SDI信号入力など多様な入力に対応できる。
なお、BVM-Eシリーズは4月11日から米ラスベガスで開催される「NAB Show 2011」に出展される予定だ。
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