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8年間も名機と呼ばれ続けている実力派、ゼンハイザー「HD 650」高級ヘッドフォンを一気聴き!

» 2011年03月18日 14時59分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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 ヘッドフォンに興味のある人であれば誰もが知っている、そして多くの人が一度は手にしたいと思っている製品の1つが、このゼンハイザー「HD 650」だ。外観から分かるとおり、スタジオモニターとしての流れをくむ本格派で、2003年のデビュー当初から音楽ファンの心をつかみ、フラッグシップとして「HD 800」がデビューした後も、高級ヘッドフォンの定番モデルとして根強い人気を保ち続けている。

ゼンハイザー「HD 650」

 本物のプロオーディオを有するゼンハイザーのラインアップとしては、一応コンシュマー向けの製品となっている。しかし、高耐久性かつ軽量なボディーや取り外し可能なケーブル、音質重視の高インピーダンス特性など、特長としてはスタジオモニターそのものといっていいだろう。当然のごとくフランジもオープンエアータイプが採用され、室内での使用が前提となっている。ボディーカラーは、ガンメタリックに近いダークグレー1色のみ。

ユーザビリティー

 ベロア素材が採用された楕円(だえん)形のイヤーパッドは、触り心地が良く、かつ耳たぶをすっぽりと覆う装着でタイプのため、長時間の使用時にかかる負担が少ない。またヘッドバンドは、両サイドを伸び縮みさせてサイズ調整するタイプで、手間なくベストサイズに調整することができる。

ベロア素材が採用されたイヤーパッドは、触り心地が良い

 OFC銅線とケブラー系シースを採用するケーブルは、3メートルの長さが用意されている。室内使用が前提のため、プラグは標準ステレオ端子だが、同素材のミニプラグ変換ケーブルが付属するため不便はない。ヘッドフォン側は両側出しタイプながら、取り外しが可能なのでメインテナンス性は高い。自分にピッタリの長さのカスタムケーブルに交換できることもうれしいが、なによりも長期間使い続けるうえで一番痛みやすいケーブルが交換できる点はありがたい。

OFC銅線とケブラー系シースを採用するケーブルは、3メートル。ケーブル交換も可能だ

 注意しなければならないのは、高インピーダンス(300オームもある!)故に再生環境を選ぶことだ。音圧レベルが103dBあるため、「iPod touch」でも何とかボリュームを確保できるが、ほとんど本領は発揮できない。逆にヘッドフォンアンプのRME「babyface」を併用すると、打って変わってダイナミックかつリアルなサウンドを堪能できた。USB DACやヘッドフォンアンプを活用した、室内での使用がオススメだ。

サウンドの特長

 ニュートラルなサウンドバランスと音色を持つ、ヘッドフォンのお手本のようなサウンド。高域は繊細なニュアンス表現を持ちつつもヌケがよく、中域はある程度の厚みを確保しつつもクリアさが信条。そして低域はボトムラインまでの伸びをしっかり確保しつつ、適度な量感で音楽の躍動感をしっかり伝えてくれる。

 さまざまなジャンルの音楽、演奏をそつなくこなせる実力を持つが、それよりも素晴らしいのはボーカルの歌唱力だ。男性も女性も、色気過多にならず、さりとて冷静になりすぎず、そのミュージシャンが持つ声の特長をリアルに、しかも心地よい響きと肉感を伴って堪能させてくれる。

 一方で解像度感もしっかり確保されており、演奏のニュアンスが詳細まで伝わってくるほか、空間的な拡がりもなかなかの良好さを見せる。倍音成分にわずかなクセがあり、ピアノは音が伸びきらないキーもあったが、解像度の良さがそれをフォローとしてあまりあるので、演奏を楽しんでいる際はそれほど気にならないだろう。

 確かに、これをスタジオモニターと断言してしまうのは少々乱暴な気がする。とくに高域の、スピーディーかつヌケの良さを確保しつつも、鋭すぎない範囲に留めている絶妙なチューニングは、ゼンハイザー、いやHD 650ならではの魅力だといえる。名機と呼ばれ続け、リファレンスとして使い続けられている理由がよく分かった。


音質評価  
解像度 (粗い−−−○−きめ細かい)
帯域幅 (ナロー−−−−○ワイド)
帯域バランス (低域重視−−−○−フラット)
音色傾向 (ウォーム−−○−−クール)

メーカー ゼンハイザー
型番 HD 650
型式 オープンエアー・ダイナミック型
周波数特性 10〜3万9500Hz
感度(音圧レベル) 103dB/mW
インピーダンス 300オーム
ケーブル長 3メートル
重量 260グラム
価格 7万5000円


試聴環境

 今回の試聴には、「iPod touch」を活用しつつもPCオーディオ環境での再生をメインとした。なぜなら、音質的だけでなくアンプ出力的にもiPod touchでは力不足となることが容易に想像できたからだ。

 USB DACとして活用したのは、シンタックスジャパンから2月に発売されたRMEの新製品「babyface」。また、音質評価の基準とするリファレンス・ヘッドフォンには、シュアーの「SRH440」を使用している。




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