オーディオテクニカの高級ヘッドフォンのなかには、ロングセラーを続ける定番モデルがある。今回はそちらも紹介しよう。
製品名は、「ATH-AD2000」という。スタジオモニター的な使い方も想定した、オープンエアータイプのヘッドフォンである。発売は2004年11月だから、すでに6年以上作り続けられているのだが、その人気はいまでも衰えを知らない、評判のモデルだ。
ドライバーは直径53ミリ、磁気回路にはパーメンジュール、加えて7NのOFCボイスコイルなど、前回の「ATH-A2000X」に搭載されていた高品位パーツ&テクノロジーの多くが、すでにこちらに採用されている。またジョイントとフレームにマグネシウムを、パンチングケースにアルミニウム合金をチョイスすることで本体質量250グラムを実現、長時間使用時の快適性も配慮されている。なお、フランジはオープンエアータイプのため、使用は屋内に限定される。
改良前とはいえ「3D方式ウイングサポート」はさすがに快適だ。ATH-A2000X同等とはいわないが、装着時に一切の調整が必要ないのは、とても手軽で便利だ。イヤーパッドはスウェード調のエクセーヌで、感触はなかなか良い。ただしATH-A2000Xのように耳たぶの周りを完全に覆うタイプでなく、多少耳たぶの上に乗るため、6時間も付けているとさすがに圧迫感が気になってきた。とはいえ普通の使い方、アルバム数枚、映画1本を見るくらいであれば、かなり快適なはずだ。
ストレスなく拡がる音場といい、一切のカラーレーションを排したストレートな音色といい、ロングセラーになる所以がよく分かる、ストレートかつ自然なサウンド。まるで上質な小型スピーカーを耳の左右において聴いているかのよう。演奏者の立ち位置がよく分かるし、何よりも演奏されている場所の空気感が良く伝わってくる。クラプトンのアンプラグドが、かなり狭い会場で収録されたことを感じ取れる、貴重なヘッドフォンだ。
惜しむべきは、ATH-A2000Xも含め最新モデルに対して、解像度感で多少見劣りすることだろうか。低域も、ATH-A2000Xを聴いたあとでは多少フォーカスの甘さを感じる。しかし、それらのマイナスポイントを含めても、ATH-AD2000には独特の魅力がある。ヘッドフォンでありながらまるで据え置き型スピーカーのような、この自然でリアリティの高いサウンドは、そうそう代わりのあるものではない。
また自然な音色ということは、音楽ジャンルを選ばないだけでなく、映画などの映像コンテンツにも好ましいということでもある。こういった汎用性の高さも含め、使い勝手のよい製品だと断言しよう。
| 音質評価 | |
|---|---|
| 解像度 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
| 帯域幅 | (ナロー−−−○−ワイド) |
| 帯域バランス | (低域重視−−○−−フラット) |
| 音色傾向 | (ウォーム−−○−−クール) |
| メーカー | オーディオテクニカ |
|---|---|
| 型番 | ATH-AD2000 |
| 型式 | オープンエアーダイナミック型 |
| 周波数特性 | 5〜4万5000Hz |
| 感度(音圧レベル) | 102dB/mW |
| インピーダンス | 40オーム |
| ケーブル長 | 3メートル |
| 重量 | 298グラム |
| 価格 | 8万4000円 |
今回の試聴には、「iPod touch」を活用しつつもPCオーディオ環境での再生をメインとした。なぜなら、音質的だけでなくアンプ出力的にもiPod touchでは力不足となることが容易に想像できたからだ。
USB DACとして活用したのは、シンタックスジャパンから2月に発売されたRMEの新製品「babyface」。また、音質評価の基準とするリファレンス・ヘッドフォンには、シュアーの「SRH440」を使用している。
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