日本有数のヘッドフォンメーカーであり、多数の製品を取りそろえるオーディオテクニカだけあって、高級モデルのラインアップも幅広く用意されている。そのなかでも今回紹介する「ATH-A2000X」は、オーディオユーザー向けの上級シリーズ「アートシリーズ」のフラッグシップモデルとなる。
さすがにこのクラスともなると、製品に対するこだわりが違う。ドライバーは新開発の53ミリ径を採用、マグネットはパーメンジュール(鉄とコバルトを1対1で混ぜた合金)、ボイスコイルは7NのOFC(純度99.99999%の無酸素銅)を採用するなど、使用しているパーツはまさに豪華尽くめ。極めつけは、フランジとフレームに採用されたマグネシウム合金だろう。これにより、ボディの軽量化もさることながら、音質に関しても大幅な向上を実現することができたという。さらにケーブルは、直付けタイプながらもOFC-6N+OFCのハイブリッド導体でクオリティーを確保、同時にシースに高弾性エラストーマーを採用して絡みにくくするなど、使い勝手の面も考慮されている。
装着しての第一印象は、とにかく軽いことだ。「3D方式ウイングサポート」と呼ばれる、独自機構のヘッドサポートは、単に装着が手軽なだけではなく、フィット感がとても良い。しかも、ATH-A2000Xならではの軽量さもあって、装着にまつわるストレスは皆無といっていい。実際数時間にわたって使用し続けてみたが、全く疲れや圧迫感は感じなかった。
またクラリーノ素材を表皮に採用するイヤーパッドは、触り心地がとても良く、そのうえ長時間使用時にも汗が気になることはない。装着性に関しては相当に優秀といえる。
なお、音漏れはほとんどしないので、屋外に持ち出して使用することも可能だ。
まず目がいくのが、“超”がつくほどの高解像度感だ。特に中域〜高域にかけてのきめ細やかさは素晴らしく、演奏のすべてが目に見えるかのよう。ハイハットも素材の硬さからチューニングまで事細かに伝わってくるし、アコースティックギターはつま弾きのニュアンスまで感じられる。また、高域への倍音成分もそろいが良いのだろう、ピアノの音は伸びやかで心地よい。
金属フランジならではのスピーディーで切れの良い高音で、かつ余計な音の膨らみや柔らかさは持たせていない原音主義的なサウンドであるにもかかわらず、この音楽性の豊かさはさすがだ。これには中高域の解像度もさることながら、低域とのバランスの絶妙さが関与していると思われる。
その低域は、バスレフ効果など音楽のリアルさを妨げてしまいそうなボリュームアップを一切排した、ソリッドなイメージ。しかしボリューム感は充分保たれており、不足感はない。そのうえ芯が強く、最低域もかなりのところまで伸びているため、演奏のキレやスピード感がとても良い。これはいい。
高解像度はクラシックを聴くためにベストなクオリティーだし、低域のキレの良さはロックを存分に楽しませてくれる。音楽ジャンルを選ばない、なかなかの優等生だ。
音質評価 | |
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解像度 | (粗い−−−−○きめ細かい) |
帯域幅 | (ナロー−−−−○ワイド) |
帯域バランス | (低域重視−−−−○フラット) |
音色傾向 | (ウォーム−−○−−クール) |
メーカー | オーディオテクニカ |
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型番 | ATH-A2000X |
型式 | 密閉ダイナミック型 |
周波数特性 | 5〜4万5000Hz |
感度(音圧レベル) | 101dB/mW |
インピーダンス | 42オーム |
ケーブル長 | 約3メートル |
重量 | 298グラム |
価格 | 7万8750円 |
今回の試聴には、「iPod touch」を活用しつつもPCオーディオ環境での再生をメインとした。なぜなら、音質的だけでなくアンプ出力的にもiPod touchでは力不足となることが容易に想像できたからだ。
USB DACとして活用したのは、シンタックスジャパンから2月に発売されたRMEの新製品「babyface」。また、音質評価の基準とするリファレンス・ヘッドフォンには、シュアーの「SRH440」を使用している。
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