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“麻倉式PCオーディオ”のススメ(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)

» 2011年07月27日 17時06分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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おまけコーナー「麻倉怜士のネタ帳」

――ノンジャンルで“お気に入り”の製品を紹介する不定期おまけ連載「麻倉怜士のネタ帳」です。

麻倉氏:以前、東和電子(Olasonic)のUSBスピーカー「TW-S7」を“PCオーディオの入門機として最適”と紹介しましたが、少し補足したいと思います。

東和電子(Olasonic)のUSBスピーカー「TW-S7」

 今回の連載で取り上げたWindowsのOSミキサージャンプですが、TW-S7のようにUSBオーディオとして認識されるアクティブスピーカーなら接続するだけでジャンプできます。TW-S7のDACは特別に高級なチップを使用しているわけではありませんが、OSミキサージャンプの恩恵だけを考えても利用価値は高いでしょう。音質面ではアナログ接続に比べて、しなやかさが増し、フォーカスも上がり、音場の情報量も増えました。

楽曲検索の進歩

麻倉氏:もう1つ、最近印象に残ったのが、Gracenote(グレースノート)の楽曲検索です。グレースノートはCDのメタデータの世界最大の提供業者。最近開かれたGracenoteの製品説明会に出掛け、個人的に感動したのが、楽曲判断機能です。

 ラジオを聴いていて、テレビを見ていて、あっこの曲、素敵と思っても、曲名が分からないことが多いですが、曲が終わってから、名前を紹介してくれる親切な放送局は意外に少ない。そんな時はなんだかすっきりしない。すごくいい曲だったのに曲名が分からない。CDも買えないし、二度と聞けないとなると、余計に悔しくなりますね。

 現在、各キャリアのスマートフォンに入ってグレースノートの楽曲判断機能は、曲の特長をデータベース化して、マイクを通じてクラウドベースでマッチした曲を教えてくれるというものです。しかも、検索結果から音楽配信サービスにリンクしていて、そのまま購入することもできます。

 なぜ感動したのかというと、かつてのソニーのアイデアが、さらにスマートになって登場したからです。それが2000年に登場した「eMarker」(イーマーカー)。専用端末の「EMK-A5」は、曲名を知るペンダントのような端末です。ラジオやテレビを視聴していて「あっこれ!」と感じたら、即座に端末のボタンを押す。この時、端末内蔵のメモリーに日時時間情報が蓄積されます。次に、端末とPCを付属のUSBケーブルで接続し、専用サイトにアクセス。するとメモリーされた時間情報から、その時にその局(あらかじめサイトによく聞き,見る放送局を登録しておく)でかかっていた曲名や演奏者名がすぐに分かる、という仕組みでした。

eMarkerの専用端末「EMK-A5」(2000年12月発売)。2300円で販売されていた

 このサービスを考え付いたソニーの担当者は、学生時代にFM局でアルバイトをした時に、リスナーからの曲に対する問い合わせが非常に多かったことから発想したといいます。はじめは、ラジオ番組にサブチャンネルを設け、今聞いた曲をすぐにダウンロードできる仕組みを考えたということですが、これではラジオにPCが入ったようなもので高価格になります。そこで、必要な機能をどんどんネットに持っていき、ついに究極の姿として、ハードはこれ以上小さく、シンプルにしようのないペンダント型となり,機能はサービスに付託することで、総合的な機能を果たすという成り行きになったのです。今回のグレースノートの楽曲判断機能は、それをさらにさらに進化させたものですが、とにかく曲目を知りたいというニーズはいつも普遍です。

 ソニーの「キュリオシティ」などでは、グレースノートのレコメンデーション機能もくわえ、気分によって異なる楽曲をお勧めしてくれます。私が欲しいのが、コード進行による感動の違いを判断してくれる機能。例えば、ハ長調でいうとC AmとC Eはまるで感情が違います。C Amはメジャーからマイナーに移るドラマティック感がありますが、C Eはダイアトニック(音階音)進行ではなくノンダイアトニック進行なので、深い感情が喚起されます。グレースノートはCDの分析には長けていますが、今後は、もっと音楽自体の深い分析にも進むべきでしょう。

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